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その本を読み返す度にずっと、このループから抜けられないうちは淳太くんのことを忘れるなんて無理だろうと思っていた。そしてようやくこの物語から離れられると思った時には、同じ作者の別の作品が追加されていて。
暫く淳太くんを忘れることはできないと悟った。結局そのループから抜け出せたのか、未だにその渦の中にいるのか──。
「……違う」
どうして、なかったことにしてって言ったのに。淳太くんもそれを受け入れたと思っていたのに。
「私たちがそういうことしてたってのは勿論バレたくないし、私たちが幼馴染ってことも」
「Aはなんでそんなにバレたくないん？」
覗き込む黒目が肥大に感じられて、後退りしてしまいそうだ。
「淳太くんが、手首折るって言うからやろ」
それくらいの気持ちで釘を刺されたんだもの。
「あの時、本当に、絶対誰にも言ってほしくなかったん？最初からなかったことにしてほしかったん？」
ほら、そうやって、一方的に私の心を覗いてきて、突かれたくない真意だけ取り出して。
もういっそここで肯定してしまえば楽なんだろうけど、それは簡単にはできなくて、それは神山くんのこととか穂花さんのこととかもあるけれど、私がまだ淳太くんという渦の中心にいると悟ってしまったから。
「私はもう、あの時とは違うから」
「違うって……？」
「もう子供やない」
「ふーん、そっか。そりゃもう、子供やないよな」
僅かに眉根を寄せた淳太くんからは苛立ちが感じられた。ボランティアに行った日、助手席に押し込まれた時と似ている。
次の瞬間、下ろした髪を纏めて持ち上げられ、首元が露になる。
「え、あ……」
「こんな大層なもん付けてきて」
私の首元へ落とされる淳太くんの視線が、痛く、鋭く、それは禍々しい感情で滅多刺しにされる気分だった。
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