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淳太くんのことだから、てっきり彼女のことは隠したいのだと思っていた。
「桐沢穂花です。Aちゃんのこと、淳くんから聞いとるよ」
だから、淳太くんの家に回覧板を回しに行った時、淳太くんの彼女と出くわしても何も驚かなかった。
「え。えっと…淳太くん、この人は…」
「俺の彼女」
「あー、あ、へー…」
( …隠さないんだ。)
俺の彼女って、堂々と紹介しちゃうんだ。そりゃ、淳太くんの妹的存在でしかない私に紹介してもしなくても、特に変わったことなんてないのだけれど。
「Aちゃんかわいい〜淳くんとはいつから知り合いなの？」
「えっと…六年前」
「じゃあ淳くんが中学生の時？」
「そんな感じやな」
え〜淳太くんの中学時代とかめっちゃ気になる！って穂花さんが強請れば、淳太くんは少し困った顔をしながら、しゃーないな、なんて笑ってアルバムを探しに行った。
「Aちゃんたしか、クッキー好きやなかったっけ？」
「はい、そうです」
「淳くんから聞いてな、今日作ってきてん！」
大きな袋に入っていたクッキーを取り出す穂花さん。色とりどりで様々な形をしたクッキーはキラキラと輝いて見えた。
「あ、割れてない！よかったぁ〜慎重に持ってきた甲斐があったわぁ」
お菓子作りが得意らしい穂花さんが腕によりをかけて作ってくれたらしい。まるで売り物のようなクッキーを一つ手に取り、口に運ぶ。
「…美味しい」
「ほんまに！？よかったぁ！」
花が咲いたような笑顔、鈴を転がしたような笑い声。大人っぽくて品があるのに、可憐で気さくな穂花さんを好きになる淳太くんの気持ちが分かる。
「あ。淳くんがAちゃんイチゴ味好きって言うてたけど、合ってた？」
「今は…ココアの方が好きです」
「あー、さっきからココア食べてると思ったわ！淳くん〜〜！」
淳太くんの家に何回も来ているのか、迷うことなく淳太くんの元へ向かう穂花さん。
本当はまだイチゴの方が好きだけど、淳太くんに少しでも近づきたくて背伸びをしただけ。一人きりになったリビングで、イチゴ味のクッキーを頬張った。
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