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約束の土曜日。クローゼットの奥に閉まっていた少し大人っぽい服を着て、待ち合わせ場所に向かうと既に神山くんがいた。こちらに気づき、手を振ってくれる。
「待ってない?」
「んーん、全然」
微笑んだ神山くんが「じゃ、行こ」と私の手を取り歩き出す。私より大きいその手に戸惑いつつ、神山くんについて行く。
「どこ行くん?」
「ん〜特定の店とかやなくて、色々回りたいかな。ここいい店いっぱいあるんやで」
神山くんのことまだ知らない頃の私は、最近の流行やファッションに疎いのかなと思っていたけれど、むしろ真逆みたいだ。私が教えてもらう側だと知って、大人しく享受させていただく。
「まず服見よ」
「あ…ダメやったかな?」
「露出しすぎやから。特に足」
スカート丈が膝上は有り得んからと吐き捨てる神山くんに連れられたブティックは、見るからに高貴でおしゃれで高そうだった。
「流石に膝は隠れんとダメやわ…」
「そ、そういうもんなん…?」
「ほかの男に見られんの嫌やから」
これとかどう?と神山くんが合わせてきたのは、どれもパンツやロングスカートばかりだった。気を遣わせたくなくて、一番安いものを買ってもらい着替えてみると、今のコーディネートにも合っていてこのままでいることにした。
「首元にも何か欲しかったな…」
「あの、神山くん」
「ん?」
私の全身をチェックする神山くん。
「いつまで、その…手は繋いでるん?」
「え。今日ずっとやろ。だってデートやで」
「いや、デートって。言い方の問題、」
じゃAは何だと思ってるん?って聞かれたから、お詫びと答えると、それもそうかと納得されてしまった。そこは受け入れるのか……。
「あ、ここ寄りたい」
今度神山くんに連れられたのはアクセサリーショップ。キラキラとしていて、店そのものがアクセサリーのようだった。
「これとか。Aに似合うんやないかな」
神山くんが私に合わせてきたのは、白くて小さな花が三つ付いているネックレスだった。
「…かわいい」
「気に入った?」
「うん」
なんだかアクセサリーだけで、自分が少し華やかになれたような気がする。
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