014 ページ14
.
翌週の放課後。掃除に行こうとする神山くんを引き止めた。
「この前はごめん」
「…え、なにが？」
キョトンとしている神山くんは特段気にしていない様子だったが、これも私の我儘というかただの要らないプライド。
「ボランティアのとき、突然帰ったりして」
「んーん。全然大丈夫」
気にしてない様子の神山くんだけど、あの時の別れ方は失礼だったと思うし、申し訳なさで自責してしまう。
「いや、でも、お詫びさせてほしい」
「Aさんはあの日と同じことされたいん？」
神山くんの刺すような視線にドキッとした。
内気な神山くんはいつも私をさん付けで呼ぶ。あの日の神山くんとはどこか別人のようだと思っていたから、さん付けで呼ばれるとどの神山くんも神山くんなんだなって再認識させられる。
どう返すのが正解なのか分からず押し黙って、首を振った。
「じゃ、次の土曜、一日俺にくれる？」
神山くんが優しく微笑んで、私はすぐに頷いた。私にできることがあると思うと嬉しいし、私に話してくれたことも。
「何するん？」
「デート」
「デ……」
一日俺にくれるってそういうことやで、神山くんの細まった目は意地悪で、でも少し楽しんでいるようだから、神山くんがよく分からなくなってくる。分からなくて掴めないのは、淳太くんだけで十分なのに。
「Aさんは、誰にでもそうなん？」
「え…そうって…？」
純粋に疑問、と言ったように少々首を傾げる神山くん。
「献身的で、頼まれたら断れない」
そうだろうか。私はただ、私にできることがあるなら喜んでやるだけだ。
「Aさんがいいなら、いいけど」
「うん」
「勘違いさせるで」
私の横を通り過ぎる際に、頭を軽く触って「俺とか」と呟いた。え、なにそれ。どういう意味。
「早く掃除行かな」
扉の前で待ってくれてる神山くんの元へ駆け寄る。どうしよう、私の周りの人達みんな、掴めない遠くの場所に行ってしまうみたい。
「土曜日、楽しみにしててな」
私を見下ろす神山くんの表情からも、何も読み取れないまま。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 367人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
