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淳太くんが運転席へ移動する間、急いで赤くなった頬を隠して、息を整える。
その子供扱いは、もう何回目だろう。私は淳太くんよりも年下で、淳太くんよりも子供だけど、そんなにしつこく子供だなんて言われたら私だって気になってしまう。
いい加減、子供扱いはやめてほしい。私は必死に淳太くんに追いつこうとしているのに、淳太くんだって走る速度を変えてるわけじゃないのに、永遠に私が彼に追いつけないような。そんな現実を突きつけられたみたい。
まるで、Aのことなんか絶対好きにならないって言ってるみたい。
「なかま、じゅんたです。よろしくね」
淳太くんを初めて出会った時のことは覚えてる。私が幼稚園児だった頃、近所に引っ越してきた淳太くんがしゃがんで、私と目線を合わせて丁寧に挨拶してくれた。
「じゅんた？へんなの」
「変か、そっかぁ。Aちゃんは、かわいいお名前やね」
そう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。あの柔らかい瞳は今でも忘れられない。
淳太くんは、私が声を掛ければいつでも、いつまでも傍にいてくれた。誰かと話したい時、勉強が分からない時、初恋が実らなかった時。淳太くんはいつまでも私の我儘に付き合ってくれた。
いつからか、それは私にだけで、特別な感情を抱いてくれてるからだと、どこかで勘違いをした。大人で、でも私と目線を合わせてくれる彼のことが好きになっていた。
想いというものは募る一方で、告白しようと決心した次の日、私は見てしまった。淳太くんと彼女がいるところを。仲良さそうに手を繋いでいて、淳太くんの彼女は大人で品のある人だった。
やっぱり、そうだよなぁ。
所詮私は子供で、いくら背伸びしたって淳太くんに届くことはない。淳太くんの引越し作業を終えて、半年に一度しか会わなくなって、もう淳太くんのことも吹っ切れられると思ったのに。
「皆さんに地理を教えることになりました、中間淳太です。よろしくな」
( ……どうして。)
やっと忘れられると思ったのに。よりにもよって教科係になってる地理だなんて。優しい目線を向けられて思わず手を振ると、小さく振り返してくれた。
あんなことされたら、どうしても期待してしまうじゃない。
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