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少しして氷とタオルを持って戻ってきた大毅くんが、氷をタオルに巻いて私の足の甲に置いた。「大丈夫?」とか「痛かったな」とか声を掛けてくれるから、優しい大毅くんに戸惑いながらも頷く。
「ありがと」
私がお礼を言うと、顔を上げた大毅くんがニッと笑った。歯が多いなと今更になって思う。
「そいえば、俺の名前覚えてたん?」
「……え」
少しからかうように笑う大毅くんが、私の足を撫でる。
「そ、それくらい、覚えてる」
「よかった」
不安が晴れたように清々しい顔をした大毅くん。スマホの時計を確認して「やばっ」と慌て出す。
「そろそろ花火始まるかも」
あと十分を切っているみたいで、この人混みを見ると急いで行かないとオープニングに間に合わない。大毅くんがかき氷の屋台へ行っている間、下駄を履いて立ち上がろうとした。
「……っ」
よろけて一先ず座った後に、もう一度地に足つけて膝を伸ばしてみた。何とか立ち上がれたものの、ここから足を前に出すとなると少々苦しい。
「あーー!無理せんで」
タオルを返してきた大毅くんが急いでこちらに駆け寄る。目の前でしゃがみ、こちらに背中を見せてきた。
「……え」
「乗ってや」
「いや、でも」
「無理させられんから」
躊躇っていてもいたずらに時間が過ぎるだけだし、と大毅くんの背中に乗る。立ち上がった彼はふらつきもせずに歩き始めた。
「重くない?」
「部活やってるから平気や」
重いってことに対しては否定しないのかと屁理屈を並べつつ、人混みをかき分ける大毅くんの頭でも見る。私を背負っているから両手が使えないから、不便そうでなんだか申し訳ない。
「家の鍵見つかった?」
「……」
この怪しい沈黙。多分大毅くんは痛いところ突かれたみたいな顔をしてるんだと思う。
「…見つかってないんや」
「いや、あの後ほんま一生懸命探したんやで!?探したんやけど、マッッジでどこにもない!!」
「探してないとことかないの?」
「……排水溝の中とか」
「それは流石に調べられんわ」
私の言葉を聞いて大毅くんが大笑いするから、すれ違う人たちに見られた気がする。
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ぴの山(プロフ) - ひなさん» ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります…!! (2021年7月3日 15時) (レス) id: 8ff15dce38 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - はい!最高です。更新待ってます。頑張ってくださいね (2021年7月2日 21時) (レス) id: eedadeaf95 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの山(プロフ) - ひなさん» 本当にこういう生活ができたら幸せすぎますよね(;;)!! (2021年7月1日 23時) (レス) id: 8ff15dce38 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - こんな生活、幸せすぎる、、、。 (2021年6月27日 21時) (レス) id: eedadeaf95 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの山(プロフ) - ナナさん» ありがとうございますー!そのことについてはもう少し先のお話で分かるので待っていただけるとと嬉しいです…!モヤモヤさせてしまってすみません…(;;)! (2021年5月21日 6時) (レス) id: 8ff15dce38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴの山 | 作成日時:2021年5月5日 17時