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その後は相手に2ポイント取られ、試合は終了した。結果だけ見れば、3-0の完敗だった。全試合が終わり、観客は選手の元へ駆け寄り、片付けが着々と進められる。

「俺らもしげのとこ行こか」
「うん」

負けてしまったけど、あの1ポイントのことはどうしても忘れられない。必死にボールを追いかけ、転びそうになっても汗がへばりついても気にせず、ボールを打ち返すあの姿。

「お、神ちゃんとAや!こっちからも見えてたで、応援してくれてありがとう」

もしかしたら落ち込んでいるかもと思ったが、案外そんなことはなかったようだ。私たちを見つけて手を挙げ挨拶してくれたしげがこちらへ駆け寄る。

「しげお疲れ様」
「ありがとう〜めっちゃ綺麗に負けたわ」

一番悔しいはずのしげがそんなことを言って笑う。

「しげ…」
「あれ?この子しげの嫁?」

しげの後ろから同じテニス部員であろう人が顔を覗かせた。

「どもーうちのしげがお世話になりまーす」

ニコッと笑った男性が他の部員にも「しげの嫁来たぞー!」と紹介し始める。

「あ、いや、違うねん!」

呼びかける男性の腕を掴んだしげは必死な顔をしていた。

「友達、友達やねん」

え。漏れそうな声は喉に突っかかった。

「友達?今まで連れてこんかったやん」
「神ちゃん伝いに知り合ってん」

俺着替えるから外で待ってて、そう笑って奥の方へと消えて行った。行こう、智洋くんの言葉に頷いて、テニスコートを後にした。

友達。確かに結婚するのは18歳だし、今はまだそういう関係なのかもしれない。けれど、どうしてもモヤモヤして違和感がある響きだ。

「あ、俺バイトあるから先行くわ!しげと一緒に帰ってて」

時間を確認して慌てた智洋くんが唐突に別れを告げる。智洋くんはダンススクールのこともあるのにバイトもしているのか。

しげと二人で何を話そう。自転車を必死に漕ぐ智洋くんの背を見送りながら、何となく考える。試合のこと?テニスのこと?今日の夕飯?私たち三人の今の関係って、言葉で表すとしたら何だろう。


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ぴの山(プロフ) - ひなさん» ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります…!! (2021年7月3日 15時) (レス) id: 8ff15dce38 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - はい!最高です。更新待ってます。頑張ってくださいね (2021年7月2日 21時) (レス) id: eedadeaf95 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの山(プロフ) - ひなさん» 本当にこういう生活ができたら幸せすぎますよね(;;)!! (2021年7月1日 23時) (レス) id: 8ff15dce38 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - こんな生活、幸せすぎる、、、。 (2021年6月27日 21時) (レス) id: eedadeaf95 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの山(プロフ) - ナナさん» ありがとうございますー!そのことについてはもう少し先のお話で分かるので待っていただけるとと嬉しいです…!モヤモヤさせてしまってすみません…(;;)! (2021年5月21日 6時) (レス) id: 8ff15dce38 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴの山 | 作成日時:2021年5月5日 17時

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