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普段は私がもう少し夜更かしをしてしまうので、中々歯磨き中の大毅には会わないのだが。ジェスチャーにより洗面台を譲り、何故かうがいをする大毅の背を見届けるという構図ができあがってしまった。

うがいが終わったタイミングを見計らい一歩前に出ると、後ろを振り返った大毅と目が合って。


「…な、なに……」
「………」
「な、何やってんねん、歯磨きしたいって」


右に左にと移動するものの、それに合わせて大毅も右に左にと移動するものだから、中々洗面台まで辿り着けない。


「明日照史先輩とお出掛けやん」
「デー……」
「デートなんて認めんぞ俺は」


何キャラやねん、と思いつつ、デートと認めてくれていた頃とは違うのだろうと感じる。

照史先輩と出掛けることは、大毅が練習問題を解いている横でなんとなく出した話題であった。こいつ、こういう時に限って出掛ける日なんかを覚えてやがる……。


「行ってほしくない」
「今更何言ってんねん」
「俺もついてく」
「無理に決まってるやろ」


こういう時に限って義弟というか、年下の特権のような甘えを発動してくるのは一体何なんだ。いやこの場合は、駄々をこねるの方が正しいかもしれないが……。


「年下作戦失敗かぁ」
「何やそれ」
「いや…ええねん。成功すると思ってないし…」


未だ洗面台の前を退かない大毅にいよいよ諦めかけていると、あの時と、観覧車に乗った時と同じように手を優しく掴まれた。


「姉ちゃんが、照史先輩とか流星とかと一緒にいるのは正直……むっっちゃくちゃ妬ける、妬く」
「………」
「でも、どんな人のとこに行っても最後には俺のところに来てほしいと思ってる。俺らがじいちゃんばあちゃんになっても同じ」


大毅は私に強制や強要はしない。ただ待ってくれているのだ。そんな大毅を前にして感じるこの気持ちに、私は答えを出さなくちゃいけない。

通知音が鳴る。


『明日、楽しみにしてるで』




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作者名:ぴの山 | 作成日時:2023年5月25日 15時

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