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ベッドの上で暖かいスープを飲む。額との温度差のギャップが寧ろ心地いい。
早起きを推奨されていたはずの翌日。私は見事に高熱を出し、こうして療養を余儀なくされていた。何となく分かってはいたことだけど、何ヶ月も前から楽しみにしていた予定が潰れるのはやはり寂しいものである。
友達から送られてくる写真を見て修学旅行気分を味わおうなどと考えていると、お母さんが「お昼ご飯は大毅が作ってくれるって」なんて伝言が言い渡された。
「え、大毅……?」
憔悴しかける私の返事は小さいものだったようで、母にまでは届かなかった。疑問が残ったままに、壁一点を見つめながらぼうっとしていると。
先程お母さんによって閉められた部屋の扉が叩かれた。お母さんにしては強い音だ。返事をすると、ゆっくりと扉が開いていき。
「…………」
目が合った。大毅だった。
「え……大毅、学校は?」
「…世界史めんどいし行かん」
大毅が私の自室に入ってくるのは初めてで、少しソワソワしているみたいだった。確かに、私も楽な授業より面倒な授業の方がサボりたいタイプやなぁとか返しつつ。
勉強机に備わっている椅子に座っていいかと確認されたので、了解すれば、その椅子をこちらに持ってきて腰掛けた。
「………ごめん…」
「え…?」
「…修学旅行……」
「………」
「楽しみにしてたんやろ…?」
今回の修学旅行に気合いを入れていたのも事実で、巡りたい場所や交通手段まで率先して計画を立てた身としては、ここで「全然」なんて否定することはできなかった。
特にお父さんにも協力してもらっていたし、お母さんにはオススメの観光スポットをよく聞いていたから、嫌でも大毅の耳にも入っていたのだろう。お土産は何が言い、なんて大毅に聞いてみたくらいだし。その時は無視されたけど……。
「しゃーないよ」
精一杯の返事をしたつもりが、大毅の表情は更に曇ってしまった。
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作者名:ぴの山 | 作成日時:2023年5月25日 15時