012 ページ12
.
もうこれまで幾度と見た「はぁ？？」という顔、最早伝統芸の域である。
「それはさ…どんくらい深刻に悩んでんの？」
「今抱えてる一番の悩み」
そんなに深刻なんか、と自分のことのように真剣に悩み出す大毅。言葉を探すように俯き、目を泳がせた後、真摯な眼差しがこちらへ向き直った。
「んー…自分なんでそんな風紀委員ぽくなりたいん？」
「照史先輩が風紀委員長やから」
「…え、自分アホなん？」
「大毅よりは成績いいから」
私も負けじと鮭おにぎりを頬張る。
「姉ちゃんは……まあ、はっきり言って風紀委員ぽくはないよな」
「やっぱり…？」
「でも、風紀委員は風紀委員ぽい人がやらなあかんって決まりはないし……風紀委員を目標に掲げてたら、自然とぽくなるんやないかなぁ、って……」
まあ、そんな感じや！と私の食べきれていない鮭おにぎりを奪い、見事三口で食べ切った。流石歯が多い男、口も大きいらしい。
「あ、まだ食べてたんやけど！」
「俺やって鮭好きやし〜」
「え、じゃあツナマヨより鮭あげた方がよかった？」
「んー？いや、姉ちゃんは姉ちゃんの好きな方食べたらえーやん」
結構いい台詞なんだけど、結局食べているところを奪って完食してしまった人が言う言葉ではないぞ……。
「帰ろっか」
私の言葉に頷く大毅は、コンビニで貰った袋にごみを詰め、カバンにしまった。
( ……だけど。)
生意気で機嫌の取りづらい弟だけど、それでも私に寄り添おうとしてくれるところは、いい弟を持ったなと思うのだ。
┈┈┈┈┈
「次のテスト、平均70点行かんかったらゲーム没収するから」
無事ありつけた晩御飯の時間。いつもの和やかな空気に緊張の糸を張ったのはお父さんであった。緊迫した言葉の矛先は大毅であって、大毅の手元からお椀が零れ落ちる。
「………へ」
「いつも赤点ギリギリやろ。たまには本気でテスト受けてもええんやないか」
「でも成績は問題ないし…」
「でもやない、全教科の平均70点以上や。ええな」
そして大毅の了解を待たずして、厳かな父はご馳走様と先に食卓から去ってしまった。これは……別にやると言っていないのにやらないといけない雰囲気のやつだ……。
絶望の顔をし、心做しかモノクロになった大毅に心の中でドンマイと励ましの言葉を送るのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 548人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
