義弟マニアックス【赤】 (ページ4)

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教室の扉を開け、自分の席へ向かえば色んな人が「おはよう」と返してくれる。改めて有難い、と噛みしめ席へ付けば、食い気味に親友が「なぁなぁ」と前のめりになってきた。

「おはよ」
「ああ、おはよう。なぁ今日さ」
「大毅？」
「ようわかったな」

中学時代からの親友である神野は、どうやら弟の大毅のことが気になっているらしい。神野だけと言わず、クラス中の女子が大毅を気にかけていることだろう。

( 私には理解出来ない……。)
あんな奴のどこに興味を持つ余地があるんだ。

「朝からぷりぷりしてたで」
「あー……」

何となく心当たりがあるような、ないような。

「機嫌悪いしげくんも可愛かったわぁ」
「えーー、マジ？」
「マジ」

両手で頬杖を付き、そこに顎を乗せながら天を仰ぐ神野は、朝の大毅の様子を思い出しながらふふふと気持ち悪い笑い方をした。クラスメイト数名も団結したかのように同じく笑う。

「Aはそうは思わへんの？」
「思わへん」
「少しも？」
「少しも。ミジンコ分も。」

そうして思い出されるのは、ネクタイを締められ戸惑う様子の大毅。

アレ……ちょっと可愛いかもしれないぞ。
多分ミジンコ分くらいは可愛いと思う。それくらいなら譲歩してやってもいい。

「なぁなぁ、大毅くんって彼女おらんの？」
「多分おらんと思う」
「なら好きな人は？」

グイグイと迫る神野に若干仰け反りながらも、今までの大毅の様子を考えてみる。

( 好きな人……。)
そういえば、大毅とその手の話をしたことが一切ない。そこは干渉すべき点ではないと思ってるからであろうか、単純に無関心だからだろうか。私は両者でもなく、大毅と恋愛の話をするという考えすら浮かばなかったのだが。

「よう知らん」
「えーー！お姉ちゃんやのに？」
「お姉ちゃんやからや」

今更姉に自分の恋愛事情をペラペラ喋るなぞ、あいつは恥ずかしがるだろう。

「あ、なら今度Aん家行くわ」
「散らかってるからダメ」
「えーそんなん気にせんのに」
「だってほら……私、風紀委員やん」

家が散らかってるという惨状をお見せしては、風紀委員の名が廃る。そんなこと言うくらいなら片付けしろよ、なんて痛いツッコミは受け付けたくない。

当の神野もそう思っているのか、じっと微妙な目つきをされた。

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