ガラスの靴で息絶えて【夏JW】 (ページ42)

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「──A」

気が付くと、彼は運転を止めていた。目的地に到着したらしい。

顔を上げると、そこは見慣れた住宅街ではなく、ホテル街だった。しかもそれはカップルの愛の巣である場所。

嫌な予感が当たるなんて、不快だ。そんな不快な予感が当たるなら、気が付かない方がマシだ。

「……せんせ、」

振り向いたら彼の顔がすぐそばにあって、言葉を紡ぐのを防がれた。押し返そうにも彼の逞しい腕に敵うはずもなく、唇の隙間から舌を捩じ込まれる。

両頬に添えられた手は首筋を伝い、あっという間にリボンを解かれた。彼に与えられる刺激全てを受け入れることしかできない。

「………っ、ん…」

熱い、火照る。意識が飛びそう。

ワイシャツのボタンを外され、隠した肌が露になる。

「……おい」
「…？」
「誰に付けられた」

こちらを睨む彼は、私の首元を見ていて、そこには赤い痕がくっきりと写されていた。

「ぅあ…これ、は……」

神山くんに。

そう言う前に、先生は私の耳を乱暴に撫でながら、またキスを落とした。ジメジメとした天気と、慣れないキスと。

もう何の液体かも分からないそれで濡れた顔を拭うことも出来ずに、ホックに掛けられる手を受け入れようとしたその時。

──プルルルル。プルルルル。

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