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──ガラリ。
まるで重岡くんの言葉を遮るかのように開けられた扉の先。未だ近い距離と繋がれた手を、お互いに思わず離した。
「あれ、いいところやった?」
ごめんごめーん、と頭を掻きながら、桐山先生は来た道を引き返す。
「い、いえ!全然!そんなのでは無いので!」
口がつい、そう滑らせていた。
あ、そうなん?と桐山先生が交互に私たちの顔を見る。なんだろう、何となく気まずい。
「あ。じゃあ私帰るので。さようなら!」
重いリュックを引っ張り、そのまま背負い込む。扉を開けると重岡くんが「また明日〜」なんて手を振ってくれていた。
私はどうしても、手を振り返すことが出来なかった。
「……何言おうとしてたん?」
「先生には関係ありません」
「いや、あるやろ」
小雨だった天気模様が徐々に雲の影を濃くしていく。
「余計なことすんなって何回言ったら分かるん?」
「………」
「告白?したいならすればええやん」
強まっていく雨足の中でも、教師の嘲笑など十分に聞こえるものだった。
「釘、刺してくる」
もし、彼がただの生徒だとしたら、教師を引き止められていたであろう。
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作者名:ぴの山 | 作成日時:2021年8月8日 15時