ガラスの靴で息絶えて【夏JW】 (ページ20)

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視界が歪みかけた。シーツを掴んで、なんとか意識を手繰り寄せる。

「俺は──」
「…出てって」
「え、」
「今すぐ出てってよ！」

足元のパイプ丸椅子に座ろうとする重岡くんの足を叩く。鍛えられた膝は、私が叩いただけではビクともしなかった。

「A、落ち着いて」
「全部重岡くんのせいでしょ！」
「え…？俺なんかしたかな…」

なんで、どうして惚けるの。私は全部知ってるのに。

「毎朝変なメッセージ送ってくるのも、手紙や写真を大量に送り付けてきたのも、ガラスの靴を私に履かせようとしてるのも、勝手に家に入ってきたのも──」
「…え、何それ」
「え……？」

重岡くんの顔色が変わった。

私の両肩を掴んで、重岡くんが迫る。

「Aそんなことされてたん？なんで…相談してや」
「や…だ、って……」
「俺で良かったら話聞くし、てかAが辛そうにしてるとこっちまで苦しいし」

離して、触らないで、今すぐここから去って。

そう思うのに振り解けないのは、恐怖心で体が固まったからというのもあるけれど、どうしても重岡くんが心の底から心配してるようにしか見えなくて。

重岡くんが紡ぐ言葉に、どうしても嘘を見い出せないから。

あんなに恐ろしかった重岡くんが、もしかしたら犯人ではないかもと思い始めた私の思考はどうかしてしまったのではないかと。

私に声をかける彼の言葉を無視して布団に潜れば、何やら言い残して去っていった。

「A、大丈夫か？」
「すみません、心配かけてしまって…」

桐山先生が今日配布されたプリントを持ってきてくれた。

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