ガラスの靴で息絶えて【夏JW】 (ページ1)

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外の蒸し暑さ、セミの鳴き声。
かき消すようにエアコンの温度を下げる。

チョコパイを食べて、ペットボトルの天然水を飲み、カバンを持つ。行ってきます、二階に呼びかけても返事がないのは、先程仕事から帰ってきたから。

私はお母さんと二人暮らしで、お母さんは昼に働き夜に働き、帰ってきたら昼のバイトまで寝るというのがルーティンになっている。

朝七時半。今日も差出人不明のメールが届く。

『俺だけのお姫様。俺の靴を履いて会いに来てね』

七月に入ってから、毎日届くようになったポエムのようなメール。今日もゴミ箱行き。

「…誰なの」

ゴミ箱に入ったメール達に問いかけても答えなんか返ってくるはずもない。

ため息をつき、ドアを開けると、そこには綺麗に揃えられたガラスの靴が一足。恨めしいほどに透明感を孕むそれは、夢みる乙女が誰もが羨む代物。

誰にも見られないように、そして私も見なかったことにするために、すぐそこの雑草が生えた一帯に投げ捨てた。

「……A？」

後ろを振り返ると、そこには怪訝そうにこちらを見つめる流星の姿。

「え、ああ、ごめん。おはよ」
「ん、はよ」

目を擦る流星はまだ少し眠そうで、でも日付が変わる前に寝たそう。相変わらず常に睡眠不足だなぁなんて思いながら、スマホをリュックのサイドポケットにしまった。

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