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小瀧くんは思い詰めてしまうタイプのようで、昨日も夜遅くまで居残りしていたらしい。目の下にクマができていて、かっこいい顔が台無しだ。
「小瀧くん、まだ時間あるし…心に余裕持って」
「ありがとうございます…ひとまず、深呼吸…」
長いまつ毛をパタパタとさせながら、ゆっくりと息をする。
「…落ち着いた？」
「ハイ、すんません…」
美術部の空気にはいつまでも慣れないようで、こうして小瀧くんと話すのも私くらい。だから、私が小瀧くんのそばにいなければと思ってしまう。
日が暮れた頃、部活を切り上げた私は小瀧くんに別れを告げ、靴を履いた。
「…あ、Aや」
待ち人をしている神山くんと目が合った。学級委員長で生徒会役員なのに金色に染まった髪の毛とピアスはとても似合ってる。
「待ってるの？」
「うん」
重岡くんの名前は口に出したくなかった。それでも神山くんは分かってくれたみたいで、その察しのいいところが好きだ。
恋愛対象とかじゃなく、ただ好きってだけ。
「しげのこと苦手なん？」
なんとなく神山くんの隣に立っていると、そんなことを聞かれた。
嫌いじゃなくて苦手って分かるところ、神山くんは本当に人のことをよく見てる。
「グイグイ来られるの、あんま得意じゃなくて」
それも、何のきっかけも無しにいきなりだったから余計辟易してしまう。
「たしかに、しげいきなりAに声掛けだしたもんなぁ」
「神山くんもそう思う？」
「うん、もうめちゃめちゃ」
眉を下げて神山くんが笑う。
「神山くんは、心当たりある？」
「うーん……ないなぁ」
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作者名：ぴの山 | 作成日時：2021年8月8日 15時
