ガラスの靴で息絶えて【夏JW】 (ページ16)

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流星は周りの目も気にせず、私を家まで運んでくれた。私が鍵を渡して、部屋のベッドで下ろされる。

小さい頃はよく部屋に招いていたけれど、中学に上がってからはお互い恥ずかしくて家を行き来することもなくなっていた。

「A大丈夫や。深呼吸して…」
「…うん」

流星はこういう時、詮索はしない。干渉することがいいことばかりではないと、流星は知ってるから。

「俺は絶対Aの味方や」
「うん…」
「辛かったらいつでも俺を頼ってな」

私の頭を優しく撫でてくれる、その大きい手が好き。滑らかなその手にいつまでも包まれていたい。

次に目を覚ました時。流星はその場にいなかった。

無意識に彼の温もりを求めてみるが、勉強机の上に小さな紙切れが置いてある。

『明日一緒に学校行こう』

それはきっと、途中で距離を開けることなく、教室まで一緒に行こうということだと思う。

これ以上流星に頼るのは、と気が引けるけれど、今の私にはもう流星しかいなかった。流星に、『いいよ』とメッセージを送った。

いつも通りの朝。だけれど、最近の憂鬱な朝よりは幾分か気持ちは晴れやかだった。

久しぶりのチョコパイを口にし、ペットボトルの天然水を飲み干して、玄関に出た。

「………は？」

玄関の中に、ガラスの靴が並べられていた。いつも履いている靴は見当たらなかった。

スマホの通知音が鳴る。七時半。無意識にそのメッセージを開いていた。

『俺が王子様だよ』

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