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ほかにも、沢山の私宛のうちわがあり、時間の許す限り皆で見て回った。どれも私を思って精一杯作ってもらったもので、そのファンの思いが痛いほどに伝わって、幸せな気持ちでいっぱいだった。

「私、ずっとファンの方の言葉に耳を傾けてなくて、悪口ばっかに目を向けてきてしまってて…でも今、ファンの皆の言葉を聞けてほんとによかった…」
「自信ついた?」
「なくなりかけてたけど、復活した…」
「よかったぁ」

ニカッと笑った神ちゃんが優しく抱きしめてくれた。目頭が熱くなって、今にも泣きそうだ。

「その涙は最後まで取っとき」

微笑んだしげが、うちわをパッと私に向ける。そこには『ピースして!』と書かれていた。戸惑いながらもピースを作る。その様子を見て、満面の笑みを浮かべたしげがピースを返してくれた。

「…俺も仲間入れて」

寂しそうに眉を下げながら私たちに抱きついてきたのは望だった。その様子を見て他のみんなも次々と抱きついてくる。
皆の熱が伝わって、膨大なエネルギーとなっていくようだった。画面越しに大勢の前で歌う勇気も、不安をものともしない不敵さも、今なら持てる気がした。

「キーコならできる、大丈夫」

神ちゃんが肩を優しく叩いてくれた。

「ある意味無観客でよかったかもしれんな、有観客ライブに向けての練習やと思って楽しも」
「あんま気負わんでええから、俺らいるし」

メンバーみんなが笑いかけてくれて、思わず私も笑顔になる。お互いに声をかけあって、改めてこの三日間全力で挑もうと思えた。

まもなくスタッフの方に呼ばれ、位置につく。カウントダウンが始まった。ここに来るまでに皆から言われた言葉、励まされた日のことが次々と思い出される。


10 9

「キーコと来れてよかった」

8 7

「今のAさんの歌い方めっちゃ好き」

6 5

「俺はキーコの努力を誰よりも知ってるで」



「一緒ならなんも怖くないやろ?」



「やっと胸張って、キーコって呼べる」



「俺は応援するで」



「それでこそAや」


幕が上がる。鼓動が高鳴るが、それ以上にステージに立てる喜びと幸せが胸躍った。

重低音が鳴り響く。皆と一緒なら、どこまでも駆けていける。それは予感ではなく、確信めいたものだった。


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るな(プロフ) - もちろんです!これからも応援してます! (2021年4月28日 23時) (レス) id: 8624103a6b (このIDを非表示/違反報告)
ぴの山(プロフ) - るなさん» ありがとうございます〜!最後までお付き合いいただけると嬉しいです…!! (2021年4月28日 21時) (レス) id: 54952e91f1 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - ものすごくストーリーが好きです!何度も読み返してます!毎日更新楽しみにしてます! (2021年4月28日 18時) (レス) id: 8624103a6b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:__ | 作成日時:2021年4月10日 18時

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