15 ページ15
.
漫画を読んだ一通りの感想やら大まかなストーリーやらをプレゼンし終わると、重岡さんは「はぁぁ」と感嘆の声をあげた。
「もっとほかのがいいかな」
「いや、なんか…」
うーーん、とこれまた悩んでいるような声を聞きながら再び冷蔵庫の方へと向かう。小分けにしてあるチョコが沢山入っている箱を取り出し、机の上に置く。箱には付箋が貼ってあり、『今日の運勢は〜？』なんて書いてあった。
「なんやろ……」
一つチョコを取り出すと、包み紙には丸く小さい付箋が貼られてあって、『今日は沢山笑える日』とあった。
「Aらしいなって」
柔らかい口調に、不意打ちの言葉の連続攻撃で手元からチョコがこぼれ落ちる。幸い、まだ包み紙を開けていなかったのでセーフだ。
「そうかな？」
「うん、それしか言葉浮かばんけど…」
笑える日のあとに可愛らしいニコちゃんマークを見つけ、それだけで少し笑顔になれた気がした。
重岡さんは「Aらしいって表現がピッタリすぎてなー」と後に付け足した。
何気なく通話画面を確認すると現在の時刻が目に入る。そろそろマネージャーの方の迎えが来る時間だ。
「あ、しげごめん。そろそろ時間や」
「そかー。頑張ってな」
「うん」
「肩の力抜いてな。無理に笑わんでもええから」
重岡さんの優しい言葉に「うん」と頷く。「よっしゃ行ってこい！」と背中を押すような重岡さんに「いってきます」と告げて電話を切った。
チョコを口に放り込み、丸い付箋をポケットに入れる。ふと、飾り棚にお守りと書かれた箱の中に綺麗な指輪を見つける。せっかくだからこれも付けていくことにした。
「おはようございます、よろしくお願いします」
外で待機してまもなく、昨日も見た車が家の前で止まった。マネージャーの方にそう伝えると、少しの間のあとに「行きますよ」と告げる。
「そういえば、小泉さん宛のファンレターが事務所に置いてあるのですが帰りに寄って行きます？」
「そうですね、お願いします」
ファンレターといっても私が見ていいものなのだろうか、と思いながらも車のバックミラーを見る。あのあと、髪を梳かして、最低限のメイクも何とかできたし、多分大丈夫なはず。
ふと、昨日見たコラ画像と私の姿が重なって急いで目線を逸らした。窓に反射する私の顔も同じように見えてしまい、下を向くしかなくなってしまったのだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな(プロフ) - もちろんです！これからも応援してます！ (2021年4月28日 23時) (
レス) id: 8624103a6b (このIDを非表示/違反報告)
ぴの山(プロフ) - るなさん» ありがとうございます〜！最後までお付き合いいただけると嬉しいです…！！ (2021年4月28日 21時) (レス) id: 54952e91f1 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - ものすごくストーリーが好きです！何度も読み返してます！毎日更新楽しみにしてます！ (2021年4月28日 18時) (レス) id: 8624103a6b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：＿＿ | 作成日時：2021年4月10日 18時
