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撮影の前に喉でも潤そうかと冷蔵庫を開けると、栄養ドリンクが沢山あり、大きなポットには麦茶が入っていた。食器棚の方を見れば、これまた沢山のお皿やお椀があるなか、ガラスのカップに白い小さな花が描かれたカップが取りやすい位置に置いてある。どこかのラジオの切り抜きで、誕生日に貰ったものだとキーコが言っていた。せっかくだからと柔らかい手つきでカップを取り、麦茶を注いでいく。

「あ、麦茶やろ?」
「分かった?」

その言葉に、勿論!と明るい声で返す重岡さん。くいっと一口飲む。

「Aはすぐ麦茶やからな〜栄養ドリンクも飲んだ?」
「栄養ドリンク?」
「そそ、今日まだ飲んでないん?」

いつの間にか落ち着いた声色に変化していた重岡さんに、ううんと返す。今日はおろか、昨日も栄養ドリンクなんか飲んでいない。

重岡さんがそんなに気にかけることなら、と冷蔵庫から栄養ドリンクを一本取りだしキャップを開ける。恐る恐る飲んでみると、想定していたよりもずっと甘い、むしろ美味しいとも言えるような味だった。

「飲んだ」
「うん、そか。あ、Aに聞きたいことあんねんけど…」

「どうしたの?」とスマホの方を見るが、重岡さんの「うーん…」と悩んでいるであろう唸り声が返ってくるだけだ。

「漫画、Aオススメのやつある??」
「オススメか…しげが読まなさそうなやつでもいい?」
「そこは気にせんといて」

重岡さんがそう言うので、栄養ドリンクのビンは捨て、カップは水につけておいて、本棚の方へと向かった。少年漫画から少女漫画、戦闘ものから恋愛系のものまで数々揃っている。その中で一冊手に取った。

「これかな……しげこい」
「しげこい」
「シゲキ的恋のハジマリ」
「へぇー」

案の定興味のなさそうな重岡さんに熱弁し始める。サッカー部の男子と調理部の女子の話で、男子の蹴ったボールがガラスを突き抜けて調理室の女子が作った料理に当たってしまうというなんともベタな始まり方。私のお気に入りのシーンは少し距離を空け二人がベンチに座っていて、男子が急に女子の膝に横たわり、どちらからともなくキスをするシーン。ライバルが現れたり、お互い部活の大会があったりと難は沢山あるものの、最後は丸く収まり全員が幸せな結末を迎えて、無事に終了した漫画である。



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るな(プロフ) - もちろんです!これからも応援してます! (2021年4月28日 23時) (レス) id: 8624103a6b (このIDを非表示/違反報告)
ぴの山(プロフ) - るなさん» ありがとうございます〜!最後までお付き合いいただけると嬉しいです…!! (2021年4月28日 21時) (レス) id: 54952e91f1 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - ものすごくストーリーが好きです!何度も読み返してます!毎日更新楽しみにしてます! (2021年4月28日 18時) (レス) id: 8624103a6b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:__ | 作成日時:2021年4月10日 18時

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