#9 ページ9
「ただいま！」
ドアを開けた瞬間、飛び込んで来たスニョン。
10時10分の笑顔にそう言われて、なぜか泣きそうになったから、ごまかすように、頭をわしゃわしゃと撫でてやった。
なのに、「ヌナがいいにおい」とかぶされて、みぞおちに衝撃。
その顔、至近距離、やばい。
この人、こんなにかっこよかったっけ。
「……早く手洗っておいで」
慌てて彼に背中を向け、落ち着きを取り戻そうと深呼吸を繰り返した。
「おいしい」
大口開けて、パスタを頬張るスニョンくん。
「そ？よかった」
素直に感想を口にしてくれるのも、付き合う前から変わらない。
一緒に住んでいるのも、生活スタイルも、付き合う前からさして変わらない。
これじゃあ、恋人同士に見えなくても、しょうがないか。
「ヌナ？」
「あ、うん？」
「どしたの？なんかあった？」
「ううん。なんもないよ。あ、おかわりあるけど、いる？」
「いるー」
なんかほんとに、何も変わってない。
けれど、自分があの頃とは、明らかに変わってしまった。
こんな年上で、可愛げのない私のどこを、スニョンは好きになってくれたんだろう。
「ヌナ？まだ起きてる？」
先に入った布団の中、ずっとぐるぐる考えていたら、お風呂上がりのスニョンが寝室に入って来た。
「あ、うん、ウトウトしてた」
起き上がり、彼に視線をやれば、やっぱり、髪はまだ濡れている。
「ほら、乾かしてあげるから」
「やった」
毎度毎度、確信犯め。
洗面台に戻り、スツールに座らせたスニョンの髪に、丁寧にドライヤーをあてる。
髪色をちょくちょく変える彼の髪の毛はかなりのダメージを負っていて、ゆっくり指を通さないとすぐに切れてしまいそう。
「スニョン、次は何色にするの？」
「あー、ちょっと暗めに戻すつもり」
「そうなんだ。ステージとか、予定ないの？」
「あるのはあるけど…
ちょっと、大人な感じでいきたいから」
鏡ごしに、目が合うと、スニョンはなぜか、照れたような表情。
「ん？」
「だから、ヌナに見合うように、髪の毛、黒くすんの！」
「あ…そう」
「何それ！俺、結構考えてるんだからね。
ヌナの彼氏ってちゃんとアピールしとかなきゃだから」
「アピール？」
「だって、店でもさ、全然ヌナの弟みたいにしか、思われてないもん。俺」
「…そっか」
「何笑ってんの？」
私も。
なんて恥ずかしくて言えない。
だから、スニョンはすごいな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1071人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nayuta(プロフ) - Nyanさん» Nyanさん、コメントありがとうございます！長期間開いてしまい申し訳ありません！またお楽しみいただけるよう、更新頑張ります！今後とも、どうぞよろしくお願いします。 (2021年3月16日 20時) (
レス) id: eddbfa096d (このIDを非表示/違反報告)
Nyan(プロフ) - 初めまして。nayutaさんが書かれる小説とっても面白くて全部見ちゃいました！本当に面白いです！更新また楽しみにしていますね。頑張ってください！ (2021年2月7日 1時) (レス) id: 38c9553a5a (このIDを非表示/違反報告)
nayuta(プロフ) - Ayaさん» Ayaさん、コメントありがとうございます！更新がずっと滞っている中、楽しみにしていただいて、本当にありがとうございます！今後もぼちぼち更新になりますが、よかったら覗いてやってください！ (2021年1月18日 0時) (レス) id: eddbfa096d (このIDを非表示/違反報告)
Aya - はじめまして。すにょんとヌナの行方が気になって、こちらの更新ずっと楽しみに待っていました！Nayutaさんの書かれるスニョンがとても可愛く大好きです^ ^これからも楽しみにしています！ (2021年1月17日 12時) (レス) id: c5f8876cc2 (このIDを非表示/違反報告)
nayuta(プロフ) - 宵さん» 宵さん、はじめまして！コメントありがとうございます！癒しになっているなんて嬉しいです。これからも楽しんでいただけるよう頑張ります！よろしくお願いします！ (2020年5月18日 1時) (レス) id: e146c0ae0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：nayuta | 作成日時：2018年9月10日 22時
