小動物系彼氏と暮らしています。

#21 ページ21

「A、俺先に帰るけど、大丈夫か？」

「うん。私もこれだけ書いたら帰るから」

そう言って、ミンソクに書きかけのポップを見せる。


二人しかいない、閉店後の店内。


ミンソクは苦笑いを浮かべて、小さなため息をこぼした。

「あんまり、無理すんなよ」

「全然大丈夫だって。

むしろ、私のほうがわがまま言ってるんだし…

絶対に、お店には迷惑かけないようにするから」


自分の店を持つために、ようやく退職する決心がついた。
同期であり、仕事においては一番の理解者であるミンソクが、背中を押してくれた。

あと1ヶ月後には店を離れることになるから、引き継ぎもろもろ
店長として残された仕事を何としても終えなければならない。




「スニョン、心配してるんじゃないか？」

「大丈夫だよ。理解してくれてると思う。
最近はね、ご飯作ってくれたり、いろいろ手伝ってくれてるんだよね」

「へぇ、アイツもなかなかやるね」

「でしょ」


「あ、噂をすれば」


ミンソクの視線を追って振り返れば、「ヌナっ」と弾む声と、10時10分の表情を浮かべた人。


「スニョン。どうしたの？」


「どうしたの？じゃないよー

なんでヒョンと一緒なの？」


「いいだろー。オフィスラブ」

冗談交じりに笑うミンソクは無視無視。


「迎えに来てくれたの？」

「…うん。ちょっと見に来た。

あ、これ」


なんか手に提げてるなーと思ったけど、それは差し入れだった。


「わ、おむすびだ」

「お、スニョン本当に料理するんだな」

「うちは家事分担制ですから」

なんてドヤ顔のスニョン、今日も可愛いねぇ。



「しょうがなく」とミンソクにも分けてあげたおむすびを頬張り、うちの子自慢をひとしきり。


「あんたらうるさいな」とミンソクには呆れられたけど、邪魔するあんたが悪いのよ。





それから、私より絵心のあるスニョンが、ポップ書くのを手伝ってくれた。


真剣な表情で、新作スイーツの写真を見ながら、絵を描いてくれているスニョンの脇で

休憩させてもらう年寄り二人。




「スニョンがいて、よかったな

一人だと、お前今ごろ体壊してるぞ」

「そうだよねー。独立しようと思えたのは、ミンソクとスニョンのおかげだよ」

「あら、いつになく殊勝なこと言うじゃん」

「いつも思ってますよー」



「あ、何二人で喋ってんだよー」



「ごめんごめん」


疲れも吹き飛んだよスニョンありがと。

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