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「ただいま」
「おかえり」
変わらずあったかい笑顔で迎えてくれたオンマに、緩む頬。
ソウルに出てきて、初めて迎えるお正月。
私は、実家で過ごすために、半年ぶりに島へ帰った。
大晦日から三が日はお店がお休みだから、ゆっくりしておいで。
そんなマスターの厚意は、病み上がりの身体にはとても有難くて。
空港まで送ってくれたジュニョンさんは「一緒に年越ししたかったんですけど」って
別れ際まで冗談か本気か分からないトーンで。
あの日から、ジュニョンさんは、それまでよりも一層、やさしくなった。
「手離すつもりはない」
その言葉を証明するように、一緒に過ごす時間は増えた。
なのに…
そうやって、彼が私を想ってくれているのを感じるほど、私は息苦しくて、申し訳なさで、胸が苦しくて、だから、実家に逃げたかったのかもしれない。
実家のこたつでみかんを口に放り込みながら、なんとなくつけていたテレビに目をやると、それは大みそかの歌謡大祭典で、たくさんのアーティストやグループがステージを華やかに彩っていた。
きっと、その中に、彼らもいるんだろうな。
そう、もう遠い存在になってしまった彼ら。
「A、アイドルの子たちと知り合ったって、言ってたわね。なんだったっけ」
「SEVENTEEN」
「あ、そうそう!島の子もいるって言ってたわよね。
そんな人が来たら、お母さんびっくりしちゃいそうだわ」
「でも、普段は普通の男の子だよ。みんな」
そう、お店や練習室で会う彼らは、普通の、いまどきの男の子たちだった。
無邪気に笑い、ふざけあう、そんな姿に、親近感を覚えて、いつの間にか、目で追うようになって、しまいには、想いを寄せてしまった。
ほんと、バカみたい。
そのうち、彼らの出番になったようで、ステージには、SEVENTEENを紹介する映像が流れ、大きな歓声、そして、まばゆい光と共に、ステージに登場する13人。
いつもの悪い癖、一番に探してしまうのは、いつだって…。
しかし、その姿だけ、見えない。
彼だけが、見つけられない。ステージに、いるはずの彼が、いない?
歌がはじまってしまった。
彼のパート、ジフンくんが、歌ってる。どういうこと?
ステージの端から端まで見渡しても、彼はいない。何かあったのだろうか。
見つめた携帯。そして気付いた。
知りたくても、私は彼の連絡先すら、知らないことに。
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nayuta(プロフ) - みく@企画垢さん» みくさん、ご指摘ありがとうございます!大変失礼をいたしました。修正しました。まだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします。 (2017年8月26日 0時) (レス) id: 7899cbdaa6 (このIDを非表示/違反報告)
みく@企画垢(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいね (2017年8月25日 19時) (レス) id: e89ce37d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nayuta | 作成日時:2017年8月18日 19時