★ ページ37
(side Hoshi)
「帰れなくなるといけないから」と、マネージャーのヒョンから練習を早めに切り上げるように言われ
長靴を履いて事務所を出たのは午後6時。
雪の降る空を見上げ、息を吐けば
真っ暗で澄んだ夜空にほわ〜っと白くのぼって、消えていく。
最近は、自分でも無理をしていたと自覚していて。
でも、年末の忙しさで、いろいろと、考える隙もないことが、逆にありがたかった。
久しぶりに足首まで積もった雪に、なんだかテンションが上がり、周りに誰もいないのをいいことに、ふふふんと、出来立てホヤホヤの新曲を口ずさんだ。
ふと、視線の先、道路の脇に、こんもりと何かが見える。
思わず立ち止まり、巻いていたマフラーを口元まで持ち上げようとしたとき、聞こえた、俺らの歌。
少し近づいてみれば、それは人で…Aちゃんだった。
なんで、こんなところで寝てるんだ…
あの日から、彼女のこと、忘れたくてあんなに避けていたのに
気がつけば、吸い寄せられるように目の前にいた。
「何、やってんの？」
上から覗き込めば、彼女は心底驚いたような顔を浮かべてた。
あぁ、久しぶりのAちゃん、だ。
起こしてあげて、楽しそうな彼女にちょっと皮肉を言えば、「テンション上がるじゃん」なんて
さっきの俺と同じようなことを考えている彼女に、募るのは、やっぱり愛おしさで。
「まぁ、そうだな」
笑えば、彼女の表情はなぜか、曇ってしまった。
「どっか、打ったの？大丈夫？」
「あ、うん、大丈夫。
雪、ふかふかだし」
「なら良かった…
家まで、送るよ」
「あ、大丈夫だよ。もうちょっとだし…」
「でも」
「本当に、大丈夫だから」
もう一度拒否られて、彼の影がちらついた。
そうだった。
「…そっか。
…ジュニョンさんと、仲良くやってんの？」
「…うん、まぁ」
「そ…
あ、今日クリスマスだし…ジュニョンさんと、過ごすか。
なんか、邪魔しちゃってごめんな」
「ううん」
目を伏せた彼女のまつげに、落ちる雪。
頭にも、肩にも雪が積もりかけていて、ようやく俺は冷静になった。
彼女の頭と肩を払い、マフラーを巻いてやる。
「スニョ…」
「返さなくていいから
早く帰りなよ」
踵を返した。
彼女のほうは、もう振り返れなかった。
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nayuta(プロフ) - みく@企画垢さん» みくさん、ご指摘ありがとうございます！大変失礼をいたしました。修正しました。まだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします。 (2017年8月26日 0時) (
レス) id: 7899cbdaa6 (このIDを非表示/違反報告)
みく@企画垢(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいね (2017年8月25日 19時) (レス) id: e89ce37d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nayuta | 作成日時：2017年8月18日 19時
