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(side You)
「A、本当によかったの?せっかく楽屋も招待してくれてたのに。こんな機会、なかなかないんだぞ」
「…いいんです。そんなすごいところ、私なんかが、絶対行けませんよ」
「…私なんか、なんて言ったらダメだよ」
「…マスター」
「みんなは、確かにすごいアイドルかもしれない。でも、お前のこと、親しく思ってるから、呼んでくれたんだろ。そんなこと言ったら、呼んでくれた彼らにも失礼だよ」
「でも…」
「もっと自信持ちなって。な」
「…マスターが羨ましいです」
「え?俺は、あいつらにも負けてないと思ってるけど。あと10歳若かったらな〜」
そう言って笑かしてくれて、幾分か気持ちが晴れた。
***
カフェに置いていた自転車を走らせて、家路を急ぐ。秋の夜風はもう冷たくて、もう一枚、ナイロンのパーカーを持って来れば、と後悔した。
築20年、3階建てのアパートの203号室。
小さなキッチンがついたワンルームが、私のお城だ。
最後の角を曲がり、アパートの前、不穏な人影が見えた。思わずペダルを漕ぐ足が止まる。その音に気付かれたのか、その影が動いて…
「Aちゃん?」「え…」「ごめん、急に」それは、スニョンくんだった。
「散らかってるけど…」
「ううん。てか、こんな時間に、ごめん」
外で話すわけにもいかず、入ってもらった、私の部屋。
そういえば、誰かを家に上げるの、家族以外では、初めてだ。
「お邪魔します」
「ごめんね、ソファとかなくて、これ、使って」
座布団代わりのクッションを渡し、ラグの上に座るスニョンくんを見届けて、お湯を沸かすため、キッチンへ直行。
スニョンくんが私の部屋にいるなんて、不思議でしょうがない。
コーヒーを淹れて、ホットミルクを加えて、お砂糖を少し。
「どうぞ」
「ありがと」
彼と少し距離をとって、テーブルを囲んで座る。
フーフーと冷まして彼が一口すする。
「美味しい」
「…よかった」
「あ…今日、来てくれてありがと」
「ううん。こっちこそありがとう。本当に、すごいね。みんな…キラキラしてて、すごかった」
思い出して、思わずニヤニヤしちゃってたみたいで、彼の笑い声で我に返った。
「あ、なんか怪しいね、ごめん」
「ううん。あ、手紙も、ありがと」
「…あ、うん」
「ねぇ」
「うん?」「なんで、楽屋、来てくれなかったの?」
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nayuta(プロフ) - みく@企画垢さん» みくさん、ご指摘ありがとうございます!大変失礼をいたしました。修正しました。まだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします。 (2017年8月26日 0時) (レス) id: 7899cbdaa6 (このIDを非表示/違反報告)
みく@企画垢(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいね (2017年8月25日 19時) (レス) id: e89ce37d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nayuta | 作成日時:2017年8月18日 19時