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「なんで、たかが他人にそこまで出来るんですか。」


帰り道に一度だけ、そう聞いた事がありました。

貴方は困った顔をして、

「特別な優しくしてる気は無いけどな。」

と、答えました。



「確かに、他人と付き合うのは疲れるよ。」

「なにせ相手は人間だからね。」

「人を貶す様なことも言うし、嘘だって言うさ。」

「趣味が合わない。性格が合わない。話が合わない。その他諸々、色々ある。」

「でもね、そんな色んな人を見てみない事には、どうしようも無いと思うんだ。」

「ただ一部の、周りの人だけを見て、人ってこういう奴なんだ。だったら付き合わない。なんてしたら、勿体ないだろう?」

「人間およそ80年。たったそれだけなんだよ。」

「死ねば何も残らない。考える事も、感じる事も、味わう事も、その他どんな事も出来なくなってしまう。」

「だから、私は今出来ることをしたい。セカイが狭くとも、色んな人を見て、考えて、こういう奴が居る、こういう奴もいるって、知りたいだけなんだ。」


知識欲、ってヤツかな。あはは。と、貴方はおどけたように笑いました。


…………正直、驚かされました。

そんな欲だけで、人に優しく出来るのか。とも考えましたが、特異な存在感を放つ人ですから。

おかしくは無いな。と思ったりしました。

ひとりの時は取っ付き難くて、一緒にいると優しくて、それでいて、知識を得ることに誰よりも貪欲で。


「それじゃあ、またね。」

「はい、さようなら。」


おかしな人です。貴方は。

ええ、本当に、本当に、おかしな人。

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作者名:翡翠@ハーゲンダッツは抹茶派 | 作成日時:2017年11月14日 21時

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