ト ページ10
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入院75日目。
私の唯一と言っても過言では無い自慢の髪はほとんど抜けてしまい、私は帽子を被って過ごしていた。
鬱くんに私のこんな姿を見て欲しくなかったので、お見舞いや荷物を持って来てもらう頻度を減らした。
抗がん剤の投与が終わらないと生えてこないと先生から聞いて、かなりのショックを受けた。
鬱くんが以前、私の髪が好きと褒めてくれていた分ショックが大きくて一晩中枕を濡らした。
kn「A、見舞いに来たで！」
ショックでふて寝をしていると、勢いよく病室のドアが開かれた。
退院してすっかり元気そうなコネシマさんが見舞いに来てくれたようだ。
「コネシマさん、来てくれてありがとうございます」
kn「どうや、調子は？」
「良くは無いですねぇ、さっきまで髪が抜けたショックでふて寝してました」
kn「綺麗な髪しとったもんなぁ」
「鬱くんも前に褒めてくれてたので、その分ショックで泣いてしまいました」
kn「あんま、無理したらあかんで。話ぐらい幾らでも聞いたるから」
「ありがとうございます。コネシマさんしか私の病状を知らないので助かります」
kn「大先生にはそろそろ教えたったらええのに」
「鬱くんには絶対言いません。言いたくないです」
「Aは強情やなぁ」と、コネシマさんはそう言いながら苦笑をした。
kn「大先生、最近見舞いに来させんようにしてるんやろ？体調悪いからとかなんか言って」
「だってこんな姿、好きな人に見て欲しくないじゃないですか。それに以前と比べて身体が凄く怠いんですよ」
「まぁ、あんまり無理せんようにな。あ、これ俺のオススメの本。良かったら暇な時に読んでや」と言って、コネシマさんから本を数冊渡される。
「……コネシマさん、活字本とか読むんですね」
「失礼な奴やな」と、コネシマさんに不服そうな顔をされた。
いや、どう見ても漫画を読んでそうな感じしかしないじゃないかと心の中で飲み込んだ。
人は見掛けによらないものだと認識を改めさせられた。
「なぁ、Aは知っとった？」と、コネシマさんが帰り間際に問い掛けて来た。
「…何をですか？」
kn「大先生が最近女遊び止めたらしいねん。何でやろうな？」
「……さぁ、私には分かりません」と答えると、コネシマさんは病室を出て帰ってしまった。
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