さよならは2回【オリジナル】 (ページ13)

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第12話　さみしがりやページ13

「Aさん」

突然背後から声がした。

「っ！？」

考えすぎて気が付かなかったのだろう。

振り向くと遥希さんが立っていた。

「びっくりさせちゃってすいません。考え事ですか？」

「はい、少しだけ…。どうされたんですか？」

「冬真くんのこと、なんですけど…」

遥希さんは一瞬＿＿私の気のせいかもしれないが＿＿表情を陰らせた。

「さっき外出たときに冬真くんと話してたんですけど、冬真くん、本当にAさんのこと大好きなんですね」

遥希さんは笑った。

「Aさんが来る前、口を開けばAさんAさんってすごい嬉しそうに話してたんです」

とても辛そうな、

「Aさんが意識をなくしている間、ずーっと冬真くん、Aさんの側にいたんですよ」

作り笑顔で。

「だからAさんの記憶がなくなったって聞いたらすごい、もう目も当てられないくらい悲しそうで…」

目に少し涙を溜めて

「Aさんが辛いことくらいわかっています。でもできることなら冬真くんと、本当の弟のように接してもらえませんか？呼び捨てにするとか、敬語をやめるとか、そんなんでいいんです」

遥希さんはお願いしますと頭を下げた。

何故この人は他人のことに頭を下げることができるのだろう。

自分には何も利益がないことくらい目に見えているのに

この人は、冬真さんは、とても優しい人なのかな

「わかりました。教えてくださってありがとうございます」

そういうと遥希さんは今度は作り笑顔ででない、本当の笑顔を浮かべた。

「あ、そうだ。僕が一人にしてあげようとか偉そうなこと言ったくせにすいません」

ドアノブに手をかけた途端、思い出したように振り返り

「僕の淹れた紅茶、美味しいから冷めないうちに飲んでくださいね！」

と言って出ていった