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「そんな、兄様が…」
兵士からの報告を聞いた紫乃はその場に崩れ落ちてしまった。
「姫様今兵が馬を用意しております、お早く三成様のおられる佐和山へ後避難をしなければ、」
「…でも、」
「姫様までがいなくなってしまっては豊臣家の再建は不可能にござりますれば!急ぎ佐和山へ、追手が届かぬうちに行かねばならないのです」
名を柊という女中は紫乃が幼い頃から仕えてきた者である。背格好は瓜二つ、万が一のことがあれば影武者になるようにと秘密裏に半兵衛から頼まれていた。
「姫様」
ぎゅう、と紫乃の手を優しく握る。
「私、貴方様のようなお優しい姫君にお仕えすることができて誠に幸せにございました」
「紫乃姫様、急がねば」
どれだけ叫んでも、手を振り解こうにも、白菊は歩みを止めてくれない。
柊の黒髪が、南蛮から取り寄せていたという白い染め粉で白く染まっていく。あぁそんな、柊が影武者になるだなんて。
「白菊様、紫乃様 馬のご用意はできておりますれば」
白菊の黒馬と、紫乃の白馬には既に馬具が取り付けられており 裏手の門のところで馬の背に押し上げられた。
「我らは少しでも時間を稼ぎます、そのうちに」
「どうかご武運を。佐和山にご到着するまでは必ず我らが追手を足止め致します」
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