*006 恋箱 ページ7
学校中だからか街の人は心なしか人が少ない。
住宅街を無言で歩き家を目指す。
「あら、ゆりんくん」
「……?あ、どうもです」
声をかけられ振り向くとAのお母さんだった。
両手には買い物袋。
「一つ、持ちますよ」
「ありがとう、ゆりんくん学校は?」
「…早退です」
ズルしたな?と聞かれ笑うしかなかった。
彼女の母親はお茶目な人だ。
彼女も同じように。
「Aのこと、ショックだったでしょう」
「……はい」
「ゆりんくんが悪い訳ではないのよ?気にしないで」
気にしないで、なんて無理な願いだ。
これから先自分はいつかこの事を思い出し。
いつか後悔し、いつか泣き叫ぶ。
「まあ……あと1週間だけどよろしくね?」
「1週間………って?」
「あら、聞いてないの?あと1週間で引っ越すのよ」
そんなの聞いてない。
もしかしたらまだ言わないだけかもしれない。
でも来週には彼女はいない。
あの残された机はどうなるのだろう。
彼女はあのクラスを思い出さないまま引っ越すのか。
それはそれで好都合だ。
自分の事を思い出さないまま離れる。
だけど寂しいのも事実だ。
この箱にしまい込んだ片想いはどうすればいい。
この気持ちを消失させたら、一生恋ができない。
そんな気さえした。
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ゆず - ばっどえんどの恋愛小説っていいですね〜 (2015年2月14日 0時) (レス) id: 202867a570 (このIDを非表示/違反報告)
綾結(プロフ) - 新作おめでとうございますー!鹿さんがシリアス書かれるということでヒャッハー!してました。お体に気をつけて下さい…!応援してます! (2014年10月28日 23時) (レス) id: d1aba36142 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 新作おめでとう!お鹿のシリアス?なのかな?ということでテンション上がってます!更新はお鹿のペースで 無理せずに頑張れ! (2014年10月28日 8時) (レス) id: 15f0901f94 (このIDを非表示/違反報告)
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