過去を壊して(下)＊青柳冬弥 ページ6
Aさんside
ホームルームを終えて、職員室に向かっていると、前からノートの山を抱えた同僚の化学教師が、よろよろと歩いて来た。
「ああ！A先生、良いところに！これ、代わりに化学準備室に運んでもらえませんか？私、他に急ぎでやらなきゃいけないことがあって…」
「え？！」
返事も言えずに、押しつけられて、ノートの山を抱えたのは私になった。
小柄な私にはキツイな、そう思いながらも化学準備室へと向かう。
『Aってお人好しだよね、それに加えて抜けてるっていうかさ』
過去が止めどなく溢れ出てくる。
『だから取られるんだよ、取られたことにも気づかないで』
あの子に言われたことは、的を射ているのかもしれないな、頼まれたら断れない、よく何かをやらかす、現にこうやって雑用係みたいにノートの山を運んでいる。私にだってやることが山積みなのに。
さすがは親友だっただけはある。親友だと思っていたのは、私だけかもしれないけれど。
今日何度目かのため息を吐こうとした時、一気に身体が軽くなった。
驚いて顔を上げると、持っていたノートの山を、軽々と抱えた青柳くんが立っていた。
「青柳くん…？」
「さっきから声を掛けていたのですが、気づかないみたいだったので」
「ほ、ほんとに？ごめんね、ちょっと考え事を…あ！悪いからそんなことしなくていいよ！気にしないで帰って…」
「いえ、俺が運びたいので、運ばせてください」
そう言ってさっさと歩き始める青柳くん。
「それに、傘を忘れてしまったので、帰れって言われても帰れないんです」
「傘？…まだ雨降ってたんだ」
言われて窓を見ると、さっきよりもさらに強くなった雨が、校庭に降り注いでいた。
化学準備室に着き、机の上にノートを置いてもらう。
そういえば化学準備室に入るのは、高校生以来だ。
あの時は2人で入ると妙にドキドキしたものだった…
「ありがとう、青柳くん。傘、私のを貸してあげるから、それ使って帰りなよ」
「…先生」
「どう、したの？あ、そんな変な傘じゃない、よ。ただ、のビニール傘、だから…っ」
決壊したように涙が溢れて止まらない。
「傘は持ってませんが、これ」
そう言って差し出されたのは、ハンカチ。
「前向けないなら、今はせめて、上を見ればどうですか」
泣いて泣いて泣き疲れた後、ああ、国語教師失格だな、と晴れやかな心で、私は上を向いた。
＊
ふじゆず様、リクエスト感謝です！
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あいらいん - こんにちは！お話全部面白くて気づいたら読み終わっていました！よければリクエストを聞いていただけないでしょうか…？できればでいいのですが、遠野新お願いします！夢主が新くんより年上だとより嬉しいです！よろしくお願いします！ (2023年3月28日 12時) (
レス) id: c168593882 (このIDを非表示/違反報告)
雪柳(プロフ) - 月兎さん» 病み要素のないお話、だと思います、了解です！またお時間いただきますね！ (2021年11月21日 7時) (レス) id: cfd3fbf4ae (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - 雪柳さん» 正統派でお願いします！正統派って何ですか？更新頑張ってくださいね！楽しみにしてます！ (2021年11月21日 6時) (レス) @page19 id: 15b58e3eb4 (このIDを非表示/違反報告)
雪柳(プロフ) - 月兎さん» ニーゴのリクありがとうございました！類くんですね、正統派系かヤンデレ系かどっちがいいですか？ (2021年11月20日 21時) (レス) id: cfd3fbf4ae (このIDを非表示/違反報告)
雪柳(プロフ) - Duskさん» リクエストありがとうございます！レオニですね、了解です！少々お待ちを！ (2021年11月20日 21時) (レス) id: cfd3fbf4ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪柳 | 作成日時：2021年8月19日 19時
