□ ページ42
「久し振り」
「本当に。お元気ですか？」
「ん、まぁそこそこかな。Aは？」
「あー…」
レイは先に戻ってるから、とヒラヒラ手を振ってデスクへと戻って行った。ここ最近、レイに対して薄情者、と何度言ってやりたい気分になったか。
「元気じゃないか。…転勤だって？」
「…どうして」
「ギリギリ友達の万年片想い野郎が言ってた」
「翔くん…」
会社の中に一旦足を踏み入れたものの、外に出て2人で並んで会話を始める。
ん、と差し出されたのはカフェオレの缶。こんな時、二宮くんだったらブラックコーヒーの缶を差し出すのかな、と考えたら少しだけ口角が上がった。
私の思考は、もう二宮くんに侵されている。
「…距離のトラウマは俺のせいだよな」
小さくごめん、と潤さんは言った。
チラリと見た横顔は、前に私が好きだった彼そのものなはずなのに、何かが違う気がして。
それはパズルのピースがはまらないような、そんな感じ。
その時、私は完全に彼を思い出に出来たんだ、と自覚した。
「お子さん元気ですか」
「あぁ…、うん。元気すぎて困るくらいに」
「ならよかったです。…ユウコさんにもよろしく伝えておいてください」
うん、と返事をした彼がA、と私の名前を呼ぶ。
その声が好きだったの、どうしようもなく。思い出せば、愛しく感じることもあるかもしれないけれど。
でも、それでも。
その声は私にはもう必要ないもの。
「幸せに。…俺が言えた台詞じゃないけど」
「潤さん…、」
「折角アイツ掴んだんだから。…な？」
「…はい」
幸せになれよ、ともう1度彼は言ってじゃあ、と駅の方へ歩き出した。
多くを話したわけじゃないけれど、何かがスッと雪解けのように解けていく。
簡単なことだった。
好きだよ。離れても好きだよ。
それだけを伝えればよかったのに。
今日、仕事が終わったら彼に伝えよう。
離れても離さないから離さないで、って。
好きだから好きでいて、って。
カツン、とヒールを鳴らして歩きながらポケットの中の携帯をまた、撫でた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2091人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かお(プロフ) - ぱるるんさん» ぱるちゃん！ありがとう！番外編とか続編はありがたいことに結構言っていただけるからどうしよう…！って感じです(笑)お恐れ多いこといっぱい言うなー！恥ずかしい！って感じだけど(笑)、いつもありがとう！次回はNさんじゃないけどよかったら！！ (2016年4月5日 11時) (
レス) id: 2b1e9a8ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かお(プロフ) - ももかさん» ありがとうございます！触れたら低温火傷しそうなキャラばっかりですが、そう言っていただけて嬉しいです(笑)次作はNさんではありませんが、お付き合いいただければありがたき幸せ(影山) (2016年4月5日 11時) (レス) id: 2b1e9a8ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かお(プロフ) - しいさん» ありがとうございます！こちらこそお付き合いいただけて嬉しいです〜 なんというかここの二宮さんは低温火傷しそうな感じだなぁと書いていてむず痒かったです(笑)一気読み！疲れるかと思いますがよろしくお願いします〜！ (2016年4月5日 11時) (レス) id: 2b1e9a8ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かお(プロフ) - ずんさん» こちらこそおつきあいありがとうございました！少ないキュンでしたが…この2人のキュンを配給できてよかったです。次作もお付き合いお願いします！ (2016年4月5日 11時) (レス) id: 2b1e9a8ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かお(プロフ) - (名前)ていくさん» こちらこそお付き合いいただきありがとうございました！甘いんだしょっぱいんだか、不思議なカップルでしたが…(笑)気に入って頂けたなら書き手冥利につきます。笑 (2016年4月5日 11時) (レス) id: 2b1e9a8ae3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かお
| 作成日時：2016年2月21日 17時
