愛する水柱さんへ【冨岡義勇】

弐拾肆 ページ26

『私、もう、大切な人を失う悲しさなんて味わいたくない！』






苦しそうにそう叫んだAを見て、




Aも俺と同じだったのかもしれないと思った。







蔦子姉さんを失い、錆兎も失った。



大切な人を失うということの苦しさを知った。






あんな思いはしたくないと心の奥底では俺も思っていたらしい、





ドロドロと苦しみが蘇ってくる。






.......Aは父親と母親を鬼に殺されたと胡蝶から聞いた。






きっと苦しかったんだろう。




胸が痛くて痛くてたまらなかっただろう。




何も出来なかった自分を恨み続けたんだろう。






『.....義勇がいない世界なんて考えられないの』







涙を流しながら苦しそうに微笑んだA。









Aに出会って俺は変わった。




憎しみしか無かったこの世界に。






温かさを、喜びを、幸せを。







俺に教えてくれたのはAだった。





俺が切腹しても、






Aが後を追って来てくれるなら、それでもいいかもなんて。







そんなことを考えてしまう自分に腹が立つ。









ああ、A。









＿＿＿＿＿＿＿＿俺の後を追うな、なんて、俺はお前に言えないのかもしれない。

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