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風のゆくえ ページ13

ルフィとAは夢を見ていた。
どこか非現実的な広い宮殿のような空間で、ウタが円形のベンチに座っている。


ウタ「ねぇ、なんでなぐらなかったの、わたしのこと。」

ルフィ「おれのパンチはピストルより強いって言っただろ?」

ウタ「昔はやってきたじゃん、へなちょこグルグルパンチ。」

『ふふっ……それはウタもやってたじゃない。』

ウタ「わたしのほうが強かったでしょ!」

ルフィ「あれは本気じゃねェ。」

ウタ「出た、負けおしみィ!」


Aがクスクスと笑う。
ウタはからかうようにそう言ってベンチから立ち上がり、ハッと何かに気づいた。


ウタ「いつの間にか、ルフィのほうが背が高くなってたし、Aの方が強くなってたんだね……」

ルフィ「『……ッ!』」


ルフィとAは息をつまらせ、思わずベンチに座り込んだ。
いつの間にかウタの手には麦わら帽子があった。ブチブチとちぎった箇所からは音符が出て行き、元通りのきれいな状態に戻っていく。
ウタは一歩二歩と二人に近づいていき、ルフィの頭に麦わら帽子をかぶせた。


ウタ「わたしにとっても大事な帽子。いつかきっと、これがもっと似合う男になるんだぞ!」


ギュッと深くかぶせられた帽子のツバで、ルフィの表情はあまり見えない。


ウタ「A、ルフィのことよろしくね。わたしのA、ルフィに預けるの心配だけど!」

『うん、わかった。』

ウタ「…………大好きだよ、A。」


ぎゅっとAを抱きしめるウタに、彼女も背中に腕を回して抱き着く。
幸せそうに笑うウタはそんなAとルフィの頬に、光るものを見た気がした。


***



シャンクスの“覇気”により海軍が揃って去っていった後。
ウタはシャンクスにもたれかかりながらファンの心配をしていた。


ウタ「ファンのみんな、大丈夫かな?」

シャンクス「大丈夫だ。人間はそんなにヤワじゃない。それに、“新時代”は目の前だ。」


シャンクスはそう言うとかたわらに目線を向けた。
そこには麦わら帽子を顔に載せて眠るルフィとそんな彼に寄り添うように眠るAの姿があった。
ウタも安心したようにルフィとAを見つめた。“新時代”を作るという夢は二人にたくそう。
ウタはそっと歌い出した。
赤髪海賊団の全員が、それがウタの最後の歌になると直感した。
一小節だって聴き逃すまい。
そう思って身じろぎもせず、みんなは全神経をウタの声に集中させた。
曲は『風のゆくえ』。十二年前に何度も何度も聴いた歌だ。

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星空ブリキ - 今更コメント失礼します! ブリキはワンピースに興味があるかといえばそうではなかったのですが、ウタちゃんをYouTubeや紅白歌合戦などで見てると見たことはないのですが映画行きたいなって思う様になりまして、少しずつ見る様になりました(長くなるので次行きます (2023年1月10日 21時) (レス) id: d2bad01efc (このIDを非表示/違反報告)
さきっち(プロフ) - みりおんさん» ありがとうございます!本編も頑張りますね! (2022年9月22日 11時) (レス) id: 47ec2d84ad (このIDを非表示/違反報告)
みりおん(プロフ) - フィルムレッドの小説お疲れ様でした!文章から映画館で見た場面が浮かび上がって、とても感動しました!!さきっちさんが書くルフィがカッコよくて推しになりました!また本編でも素敵なストーリーを楽しみにしてます! (2022年9月22日 3時) (レス) @page16 id: 574f494a01 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2022年9月21日 1時

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