ひとりじゃない証-No.3- 【金田一少年の事件簿】初代実写版

19話 ページ35

矢萩「………あれは今から10年前の話だ」



矢萩さんは静かに語り出した。



矢萩「俺たちはこの島の財宝伝説に目を付け、この島の所有者である美作の任命で島中を探索したんだ。ところがある日……捜索中の佐伯教授が前もって、崖から転落してしまったんだ」



あたしとはじめちゃんは静かに話を聞く。



矢萩「佐伯考古学科もそれで解散。今回美作からの招待状が届くまで…俺はぁ、一度もこの島に足を踏み入れたことはなかったんだよ」


一「招待状？」



矢萩さんはフンッと鼻で笑う。



矢萩「俺は例の試験なんか受けてねえよ。そんないきさつから美作に無条件で招待を受けたんだ」


『それじゃあ、八十島さんや柿本さんも？』


矢萩「多分ね」



あたしとはじめちゃんは考えるように視線を下に向けた。
その時、「おい、金田一、鈴蘭」と小声で名前を呼ばれて矢萩さんへと視線を向ける。



矢萩「あのクリスっていうガキには気を付けろよ」


一「どういう意味ですか？」


矢萩「……もしかしたらヤツは間欠泉が噴き出すのを知っていて、わざとお前達をあの場所に誘い込んだかもしれない」



ゆっくりと歩み寄ってあたしたちの後ろを通る矢萩さんに、あたしは『…そんなっ、まさか!』と笑い飛ばそうとして矢萩さんを振り返る。



矢萩「半年ほど前。アメリカでIQ180の天才少年が登場したと、ちょっとした話題になったことがあってな。確か、日本の新聞にも紹介されたはずだ」


一「…まさか、その天才少年は…」


矢萩「……クリス・アインシュタイン」



その名前にあたしとはじめちゃんは顔を見合わせた。

その夜、あたしとはじめちゃんはベランダで椅子に座って写真立てを覗き込んでいた。


美作、そして柿本。
この写真のメンバーがすでに2人も殺されている。
そして10年前、この島で事故死したという佐伯教授。
もしこの男が事故死ではなく、この写真に映ったメンバーの誰かに殺されたのだとしたら。
そしてその事実を知った、当時6歳の天才少年がその復讐に乗り出したのだとしたら。




───碧「おじ様に似てとても頭のいい子だったそうです」


───矢萩「あのクリスっていうガキには気を付けろよ」




あたしたちは立ち上がると室内へと入る。
そこにはソファに座り、何かをしているクリス君の後ろ姿があって、あたしたちはそれをじっと見つめた。


まさか…犯人はクリス君？

20話→←18話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す