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そして馬刺しを連れて来たのは、牧場で。
そこではちょうど結婚式が挙げられていた。
ワーと盛り上がる様子を外から眺める。
尊「…なんだ?」
『結婚式…?』
アンナ「ここ、この子が今までいた牧場。あの花嫁さんがずっとこの子、世話してたんだって」
尊「帰りたかったわけか」
尊がそう言うとアンナは「ううん」と首を横に振った。
私は尊の隣でじっと幸せそうに笑う新郎新婦を見つめる。
アンナ「……あの人が結婚するからその姿を見たかっただけだって」
アンナは馬刺しの頭をさす…と撫でた。
アンナ「もう元いた場所にはいられないってことわかってる。…ストレインだから」
結婚式を見詰めながらそう言ったアンナの横顔を横目で見ると私と尊は視線を合わせた。
そして尊がヒョイとアンナの首根っこを摑んで持ち上げる。
アンナ「あ」
尊「気が済んだろ」
その時、コツコツと足音がして振り返ると、多々良と出雲と華奈と世理ちゃんが此方に歩いて来ていた。
久しぶりに見る彼女の姿に笑みが浮かぶ。
『世理ちゃん!』
世理「久しぶりね、A」
世理ちゃんは私に微笑むと、すぐに顔を戻した。
笑ってた方が可愛いのに。
世理「随分迷惑をかけてくれたけど…もういいわね?そこの特殊異能鳥獣はセプター4の権限によって私が処置します」
アンナ「え…」
世理ちゃんが馬刺しに近づくと、アンナは尊に掴まれたまま「あ……ダメ」とばたばたと体を動かした。
世理「まず、名前を聞かなきゃね」
そう言ってふっと笑うと、馬刺しがポッと顔を赤く染めた。
私と尊が、ん?と馬刺しに顔を向ける。
世理「A、この子の名前は?」
『あーー………馬刺し』
非常に言い難い。
世理ちゃんは目を細めて私を見た。
世理「…………なんですって?」
『馬刺しです。』
世理ちゃんの視線から逃れるように顔を逸らすと、彼女は眉間を抑えながらはあ…とため息を吐いた。
世理「……さすが、野蛮な集団が考える名前だけあるわね…」
これ考えたの尊だけどね。
世理「仕方ない。私がつけなおすわ」
世理ちゃんの言葉に嬉しそうにしている馬刺しに彼女は顔を近づけた。
世理「そうね…白い…美しい羽を持っているからーーー白あん煮込み豆腐」
思わず私達は固まった。
出雲「……なんやて?」
世理「あなたは今日から白あん煮込み豆腐よ」
『……………尖ったセンスだね…』
落ち込んでいる馬刺しをそのままに私達は結婚式を見続けた。
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かなと - 違反だということを少しは意識して下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2019年7月24日 8時