吠舞羅のお姫様 (ページ31)

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カッと馬が光った。

尊「ただの馬じゃねーぞ…」

その言葉とほぼ同時に馬が白馬に変わり、白い羽をその背から広げる。

出雲,華奈,アンナ「『ストレイン!?』」

出雲「動物のストレインってアリなんか!?」

華奈「華奈、初めて見た…」

『私も…』

アンナ「キレイ…」

馬を見ながら呆然と言う出雲と華奈と私の隣でアンナはそう呟いた。
馬は決め顔でバサァと羽を広げる。

八田「……なんかムカつく顔してんな」

鎌本「そっすね…」

離れた場所で見ていた八田ちゃんと鎌本がそう呟く。
私の隣で椅子に座っている尊は馬をじっと見ていた。
肩ロースになる部分を見ているのだろう、尊のお腹からグーー…と音が聞こえた。
お腹へってるのか。

『尊？本気でアレ、馬刺しに見えてない？』

私が尊にそう言うと出雲がポンとアンナの肩に手を置いた。

出雲「…アンナ。馬刺しはこんな狭い場所に閉じ込めてええような子やない。寂しいけど…大空へ飛び立たせてあげような？」

多々良「丸め込みにかかったね!」

華奈「まぁ、しょうがないよね」

多々良と華奈がそう言っている中、成り行きを見ていた出羽が藤島を振り返った。

出羽「馬のストレインって…。おまえ、アレどうすんだよ」

藤島「マズいかな。ストレイン飼うって」

出羽「いや、馬の時点でマズいだろ。なんでもかんでも拾うなよ…」

出羽はそう言ってチラ…と椅子にちょこんと座っているエリックを振り返った。
視線を向けられたエリックはビクと震える。

千歳「いやいや、馬が落ちてる時点でアレだから」

まぁ、出羽と千歳の言いたいことはわかる。

出雲「さ、アンナ。馬刺しにサヨナラしような？」

さっさと追い出したいというのが丸見えだよ、出雲。

アンナ「…行きたいとこがあるの？」

アンナがそう言って馬を見た。
すると私の体がグイッと後ろに引っ張られて尊の腕の中に収まった。

尊「あぶねぇ」

『え？』

私が尊を見上げたその時、バサァと羽が羽搏き、周りの物を吹き飛ばした。
すごい風が店中に吹き荒れて、家具や皿などが壁にぶつかっては割れる。
なるほど…これを予測してたわけね、尊は。
私は尊が庇ってくれたおかげで傷は一つもない。

八田「…ヤバいんじゃねぇの」

鎌本「…ヤバいっすね」

華奈「…ヤバイわね」

八田ちゃんと鎌本と華奈の呟き。
私はブルブルと震える出雲を見て、鎌本を振り返った。

『鎌本!アンナ連れて馬刺しの散歩に行って来て!』

鎌本「了解っす!!」