吠舞羅のお姫様 (ページ6)

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出雲から紅茶を受け取り飲もうとした瞬間。

さん「俺はテメェと馴れ合いの仲にはねえ!」

さんちゃんの大きな声が聞こえてきて、私と華奈は紅茶を溢しそうになり、八田ちゃんは身を引き、出雲は片耳を押さえた。
そして後日。

さん「いいか新人。吠舞羅で大事なのは仲間との絆だ。その上で大事なのは明確な上下関係だ」

翔平「はあ…」

更に後日。

さん「いいか新人。吠舞羅で大事なのはキングへの忠誠心だ。その上で大事なのは揺ぎない下っ端精神だ」

翔平「はあ…」

更に更に後日。

さん「おい新人!!掃除が行き届いてねえぞ!!」

窓枠に残っていた埃を見てそう怒鳴ったさんちゃんに八田ちゃんと華奈の拳が飛んだ。

八田,華奈「姑かテメェは!!」

殴り飛ばされたさんちゃんはズズズズと窓枠に当たり、崩れ落ちていく。
八田ちゃんはさんちゃんの胸倉を摑んだ。

八田「黙って見守ってりゃネチネチネチネチいびりやがって」

華奈「うっとーしいっつーの!」

さん「だって…」

八田「だってじゃねーよ!吠舞羅がすげえ心のせっまい集団みたいで不快なんだよ」

八田ちゃんと華奈がさんちゃんに殴りかかってんのを見ていた翔平くんに鎌本が声をかけた。
手加減しなよ、2人とも。
私は目の前の惨劇を見ながらカウンターの椅子に座り学校の宿題に取り組んだ。

鎌本「翔平。オメー本当にあいつとダチなわけか？」

翔平「そーっすよ」

鎌本「…にしては……アレだよな………」

翔平「さんちゃんってちょっと変わってるから」

「歯ァ喰いしばれやオラァ!」と八田ちゃんの声と「覚悟はできてんでしょうねえ!」という華奈の殴りかかる声に混じってさんちゃんの「いやああああ」と叫ぶ声。
その惨状を見ながら翔平くんはあははと笑っている。
鎌本はため息を吐くと私の隣に座って趣味のカメラを回している多々良を振り返った。

鎌本「十束さん、ホントは新入りの面倒見んの十束さんと華奈さんの役じゃないんすか」

多々良「まー、フツーはそうなんだけど、2人は幼なじみっていうし。さんちゃんは翔平に構いたいみたいだし、任せちゃおうかと。それに華奈はもう放棄しちゃってるし」

『確かに…』

多々良の言葉に頷いて目の前の惨状に目を向ける。

鎌本「…その結果がアレっすよ」

多々良「へーきへーき。なんとかなるって!」

八田ちゃんと華奈に殴られ続けるさんちゃんは「助けてぇぇぇ」と悲鳴を上げている。
それを撮っていた多々良は「…でも」と翔平くんを見た。