吠舞羅のお姫様 (ページ26)

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尊が帰ってくるのをお店の外に出て待つこと数分。
多々良と藤島とエリックが帰って来て、私は多々良を華奈に任せて、藤島とエリックの元に向かった。

藤島「Aさん…」

『藤島、手は大丈夫？』

私が藤島の手を見てそう問いかけると、彼はコクンと頷いた。
そして私を見て頭を下げる。

藤島「すいません、Aさん」

『んー、謝るのは私じゃなくて尊の方だと思うよ。尊、1人で向かったから』

まあ、1人で十分だとは思うけどね。
片手を腰に当ててエリックにチラリと視線を向けると、彼はその視線にビクリと反応した。
私が口を開こうとした時、私の後ろを見た藤島が「…尊さん」と呟いたので私はすぐに振り返った。

『おかえり、尊』

尊「…ああ」

尊が私の隣に来てすぐに藤島はエリックより前に出る。

藤島「すみません。今回の件、俺の責任です」

尊はじっと藤島を見ている。

藤島「俺が…こいつの抱えてるものに気付かずに吠舞羅の中に入れたせいで」

エリック「やめろよ」

エリックは頭を下げる藤島の肩をグイッと引っ張って前に出た。

エリック「俺は下衆野郎かもしれないけど、自分の責任を人に押し付けるとこまでは落ちたくない。…覚悟はできてます」

『尊…』

私が尊を見上げると、彼はザ…とエリックに一歩近づいた。
そしてその手に炎を纏わせると、「待っ…」と止めようとする藤島を無視してガシとエリックの頭を摑んだ。

エリック「あ、あああああああ」

ゴオオオオとエリックの顔が炎に包まれる。

藤島「エリック!!」

出雲「まあ待ち」

飛び出そうとした藤島の肩を出雲が摑んだ。
尊が手を離して、踵を返すのと同時に、はっとしたエリックが左肩を見ると、そこには吠舞羅のマークがあった。

エリック「なん……で」

尊「むず痒い茶番を見てたら気が萎えた」

尊らしい。
私は彼らしい行動に笑ってお店に戻る尊の後を追いかける。
すると、お店の中から華奈と多々良が出て来た。

多々良「あんな脅かさなくても」

尊「うっせ」

尊はそう言って多々良の頭をゴッと拳でこ突いた。
思いのほか結構痛かったらしく多々良が「たーー…」と言いながら頭を押さえるのを見て、私と華奈は視線を合わせて苦笑する。
まあ、自業自得だよね。
尊がそのまま多々良の横を通り過ぎるのでその後を追いかける。

尊「……テメーは新入りの面倒見役だろ」

『華奈もねぇ』

多々良と華奈は顔を見合わせると「「はいよ」」と出雲たちの元へ向かった。