第50話 「風の声が呼ぶ谷」 ページ3
「神官様…あなたが？ユホン伯父上に弾圧されたと聞いたからもっとおじ様かと思ってた」
「それは先代でして、僕が跡を継いだのです」
現在イクスは33歳だ。
「私がここに来る事も知っていたの？」
「はい。
僕は神様の声を皆に伝えるのが仕事。この世界のあらゆる事を神様に教えてもらうんです」
「何が仕事だよ、金も稼いでないくせに。毎日祈ってるだけじゃん」
辛辣な言葉を並べたユンはぐいっとイクスの服を脱がしてバサッと大きめのタオルを渡した。
「だいたい、神の声とかうさんくさい事言ってるから城から追い出されたんでしょ」
そう言うユンにヨナが口を開こうとすると、
『うっ…ん…っ』
ヨナのすぐ近くからAの声が聞こえた。
急いでヨナがAの元まで駆けつけると、ゆっくりと自分と同じ紫の瞳が見え始める。
Aは目を開いた瞬間に見えた、ヨナの泣きそうに歪められた顔を見てふっと笑うとその頬に手を伸ばした。
『おはよう、ヨナ。何を泣いているの…？』
「姉様!よかった…っ私、目が覚めないかと思って…っ」
ポロポロと涙を零しながら伸ばされたAの手を握るヨナに、Aはふわりと笑う。
「目、覚めた？」
声が聞こえた方に顔を向けるとAにとっては見知らぬ顔がいて目を見開いた。
誰だろう…とAが思案するとヨナがそれを察してユンとイクスの紹介を始める。
「姉様、ユンとイクスよ。ここ、神官様の家みたい」
ヨナの言葉にユンが｢天才美少年ね」と言葉を付け足すが、それさえも聞こえていないAは目を見開いて一気に体を起こした。
『神官様!?……いたっ』
「無理に起き上がらない方がいいよ、頭打ってるし」
「姉様、まだ寝てていいのよ」
頭を押さえるAを見かねてユンがそう言うとヨナがAの背を支えて布団に寝かそうとするが、Aはそれを手で止めた。
そしてヨナに支えてもらいながら隣に視線を向けると包帯だらけのハクとカナの姿が見えて目を見開く。
『ハク…!カナ!』
「2人なら大丈夫だよ、死んでない」
「今は眠ってるだけよ」
「ユンが治療してくれたの」というヨナの言葉にAはユンへと視線を向けた。
『助けてくれてありがとう。ハクもカナもヨナも私の大事な人なの。本当にありがとう、ユン』
そう言ってふわりと微笑んだAにユンは顔を赤くして「別に」と視線を逸らした。
それを笑いながら見ていたヨナが思い出したようにユン達に視線を向けて口を開く。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
fruit - すごく面白いです。でもセリフを誰が言っているのかわかりにくいです。 (2021年8月13日 21時) (
レス) id: 80d0b24791 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ?(プロフ) - 面白すぎて眠れません笑これからも頑張って下さい！ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 20429ecf64 (このIDを非表示/違反報告)
あーさー - めっちゃ面白いです！ 暁のヨナを書き終わったら、FAIRYTAILの原作沿いでグレイ落ち書いてほしいです！笑 (2018年8月3日 15時) (レス) id: 3e9f6fbfb8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さきっち
| 作成日時：2018年7月27日 19時
