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第65話 ページ17

ヨナside


私は弓を構えると木の根元で木の実を食べている猪に矢を向けた。


…可愛い。

あの子が人であったとしても、戦場ならば矢を当てなければ。


キリキリと私は弦を引き絞る。


弓を引くということは、命を奪い、奪われるということ。


ヒュッと飛ばした矢は猪を掠めた。


外した。


矢が掠めた猪はすぐにその場から逃げ出す。
私はそれを見てすぐに木の根元まで駆け寄った。


父上が…。

父上が嫌った痛み…。

でも、父上。
奪わなければ。



奪わなければ私は、今、生きてゆけません。



矢尻についた猪の血を指で拭って目を閉じて覚悟を決めていると、


「惜しかったですね」


後ろからハクの声が聞こえた。
振り返るとハクと姉様とカナがいて、私は急いで目に溜まった涙を拭う。


「無駄にケガさせた、かえって残酷ね」

『迷いがあるからよ』


姉様のその言葉に私は思わず目を見開いた。
覚悟が、足りていなかったのだろうか。
そんな私を見たカナがユンを振り返る。


「ユン、先に行っていて」

「早く来てよね。もうすぐイクスの言ってた場所だから」


そう言ったユンに頷いたカナは矢を持ちながら「……さて」と私を見た。


「どこまで上達したか、師匠(せんせい)が見てあげましょう」

「私の師匠はカナじゃなくて、姉様よ」

「……」

『……』

「……」


私の言葉に思わず言葉を失うカナと姉様とハク。
微妙な空気がその場に漂うとハクがため息をついて姉様と一緒に後ろに下がった。
それを見てカナは自分の横にある木を指差す。


「はい、まずはこの木」


姉様に教えてもらった通りに弓を構えて、私はタンッとその木に矢を当てた。


「おめでとーございます。さすがです」

「とりあえず当たってます」

「なぜかしら、忌々しいわ」


パチパチと拍手するカナとハクに、イラっとしながらそう言うとカナは「ホメたのに」と溢しながら自分の顎に手を添えた。
ホメるなら棒読みで言わないでよ。


「あとは…そうね…あたし、狙って下さい」


そう言って自分を指差すカナに私は目を見開いた。
そしてすぐさま私は叫ぶ。


「無理!」

「大丈夫、よけますから。動いてる物に当てる練習。いや、人に当てる練習かな。テキトーに動きますから射ってください」


カナのその言葉に私は姉様を見た。
でも、姉様はカナの言葉に反論せず私に頷きかけたので、私は弓を構えてカナに向けた。


「当たっても知らないから…!」

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fruit - すごく面白いです。でもセリフを誰が言っているのかわかりにくいです。 (2021年8月13日 21時) (レス) id: 80d0b24791 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ?(プロフ) - 面白すぎて眠れません笑これからも頑張って下さい! (2018年11月29日 2時) (レス) id: 20429ecf64 (このIDを非表示/違反報告)
あーさー - めっちゃ面白いです! 暁のヨナを書き終わったら、FAIRYTAILの原作沿いでグレイ落ち書いてほしいです!笑 (2018年8月3日 15時) (レス) id: 3e9f6fbfb8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2018年7月27日 19時

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