第63話 ページ15
「ではこれを」
「弓？」
「あたしとハクが前線で闘う。姫さんとA姫さんは身を隠して敵を狙う」
「はい」
ヨナがそう弓を握りながら頷くと、カナは「ハクとA姫さんもそれでいいですよね？」と2人を振り返った。
ハクとAは視線を交わすと、勿論と頷く。
「ねえ、剣もちょうだい」
「今は弓しか教えません」
カナの言葉に、ぶぅと頬を膨らますヨナを見てハクは口を開いた。
「姫様。イル陛下は決して姫に武器を触らせなかった。俺たちは今、陛下の命に背きます。なぜ陛下が武器を嫌ったのか、よく考えてみて下さい」
そう言ったハクの言葉にヨナはきゅっと弓を握りしめた。
『ねえ、ハク。私にも何か頂戴？』
「ダメだ」
『なんで？私だってハクを守りたい』
Aがそう声を上げてハクにぐっと近寄る。
「あんたは弓が使えるだろ？それだけで充分だ」
『どうして？弓だけじゃ…』
「イル陛下との約束はどうした？」
その言葉にAはぎゅっと唇を噛んだ。
イルとの約束。
それは、決して人には向けないこと。
そしてAが扱っていいのは弓だけとイルに言われているのだ。
『今はそんな事言ってられないわ』
「ええ、そうですね。けど、ダメだ」
じっと対峙する2人。
懇願するようにハクを見つめても絶対に許してくれないことにAはため息をつくと、ハクから視線を逸らした。
『使う時になったら渡してくれる？弓』
「姫さんと同じ条件でよければな」
『わかった…』
ため息をついたAの頭をハクがぐしゃぐしゃと撫でた。
(守るとか……そういう事を言うな。欲が出る)
そんな2人を見ていたカナにユンが小声で「お姫様って弓出来るの？」と問いかけるとカナはそれに「A姫さんは弓の名手」と答えた。
それに驚くユンを引き連れて歩き出す。
「―――でもさ、山登りながら弓の訓練とかってどうするの？」
「旅の途中じゃなけりゃ一日二百本以上射させるんだけど」
にひゃく!?とカナの言葉に驚くヨナ。
するとそれを見ていたAが『手始めに』と口を開いた。
『とりあえず鳥や兎を弓で仕留めるのはどう？』
「一石二鳥、それ賛成。捕ったら夕食に困らないし。よろしくお姫様」
「えっ」
そして一時間後。
今日の野宿の場所を決めたA達。
ユンが荷解きをするのを見たヨナは弓矢を持って少し離れた場所に移動した。
そして空を飛ぶ鳥めがけて矢を射るが、それはヒョロヒョロと鳥に届く手前で地面に落ちていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
fruit - すごく面白いです。でもセリフを誰が言っているのかわかりにくいです。 (2021年8月13日 21時) (
レス) id: 80d0b24791 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ?(プロフ) - 面白すぎて眠れません笑これからも頑張って下さい！ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 20429ecf64 (このIDを非表示/違反報告)
あーさー - めっちゃ面白いです！ 暁のヨナを書き終わったら、FAIRYTAILの原作沿いでグレイ落ち書いてほしいです！笑 (2018年8月3日 15時) (レス) id: 3e9f6fbfb8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さきっち
| 作成日時：2018年7月27日 19時
