第62話 ページ14
「一人だけ、神話の時代より霧深き山の上に住まい、ひっそりとしかし確実に血を守り続ける一族がいます。どこの部族にも属さず、他の者を決して受け入れない」
「国境近くね」
「はい。火の部族と王都の近くを横切るので危険ですが…」
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「王都どころか戒帝国も近いわ」
「まったく…」
イクスの言葉を思い出したハクとカナがそう呟くとわっくわっくした表情でユンが拳を握りしめた。
「俺はよーやく外に出られたからすげー楽しみ。幻の里。国中を旅したら見聞録書く」
「「む?どうした、目が赤いぞ」」
そう言ったハクとカナにユンは「うるさい」と荷物をぶんっと放り投げるが2人はすたこらとユンから逃げた。
そんな3人を追いかけるヨナ。
Aはそれらを見ながら『また…』と呟いた。
『襲って来るかな、兵士達』
その言葉に振り返るヨナ達。
「どうかしら…」
ヨナが不安そうにそう溢しながらAに近寄ると、2人の周りにハク達が戻ってきた。
「大丈夫ですよ、姫様」
「俺たちが何とかします」
「あ、俺も守ってよね。か弱いんだから」
よろしく、と片手を上げるユンにAが思わず笑顔を浮かべるとその隣にいたヨナがフードを摑みながら口を開いた。
「私…覚えなきゃ、剣術」
そう言ったヨナに目を見開くAとハクとカナ。
「カナ、教えてくれるって言ったよね?道すがらでもいいから教えて」
ヨナの言葉にAとハクが目を丸くしてカナに視線を向けるが、カナは、言っとらんがな。と2人の視線に手を横に振っている。
そんなカナを見上げるヨナ。
「誰が襲って来ても撃退出来るように。私、姉様みたいに弓が出来るわけじゃないもの」
「―――姫さん…あなたに人が殺せるの?」
残酷なまでのカナの言葉にヨナは目を見開いた。
ハクとAも苦虫を潰したような顔をする。
「撃退といっても都合よく敵が逃げるわけじゃない。殺すもしくは再起不能にする。あなたに出来る?」
ヨナは俯いた。
「敵わなくても、殺せなくても、自分や姉様や、ハクやカナが逃げるスキを作るくらいはやりたい」
「俺たちはともかく護身用の剣術は必要なんじゃねぇか?」
『私はいざという時弓が使えるからいいけれど、ヨナは何もできない訳だし』
ハクとAがそう言うとカナは、確かに。と顎に手を当てて考え込んだ。
「教えてくれる?」とヨナがそう託すとカナは自身の髪の毛をくしゃりと握りながらハクが担いでいた弓を渡した。
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fruit - すごく面白いです。でもセリフを誰が言っているのかわかりにくいです。 (2021年8月13日 21時) (レス) id: 80d0b24791 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ?(プロフ) - 面白すぎて眠れません笑これからも頑張って下さい! (2018年11月29日 2時) (レス) id: 20429ecf64 (このIDを非表示/違反報告)
あーさー - めっちゃ面白いです! 暁のヨナを書き終わったら、FAIRYTAILの原作沿いでグレイ落ち書いてほしいです!笑 (2018年8月3日 15時) (レス) id: 3e9f6fbfb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2018年7月27日 19時