48話 ページ48
紅葉「『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ』……」
それは、紅葉の好きな歌だった。
川の瀬の流れが速く、岩にせき止められた急流が二つに分かれても、いずれはまた一つの流れになる。
恋しいあの人と今は別れても、いつかきっとまた会える───。
紅葉「身は離れていても心は繋がっていると、信じてましたのに……」
平次の横にいる和葉を思い出した紅葉の瞳に、涙が浮かぶ。
蘭「も、紅葉さん……」
蘭が驚くと、紅葉は涙を拭った。
紅葉「葉っぱちゃんに伝えといてください」
蘭「は、葉っぱちゃん?」
紅葉「ウチは狙った札は誰にも取らせへん。そう先生に教わってきたと……」
紅葉はそう言うと、お辞儀をして伊織と共に去っていった。
ホテルに戻ってからも、紅葉の涙ぐむ顔と言葉が蘭の頭から離れなかった。
和葉「……ちゃん……蘭ちゃん!!」
和葉に何度も名前を呼ばれて、蘭はハッと顔を上げた。
かるたの読み札をズラリと畳に並べた和葉が怪訝そうに蘭を見上げている。
和葉「何ボーッとしてんのん?大阪見物から帰ってきた後、蘭ちゃん変やで」
蘭「ご、ごめん。それより調子はどう?」
蘭がたずねると、和葉は「それがな〜」と並べたかるた札を悩まし気に見つめた。
和葉「静華さんに『試合に勝つんは得意な札を選ばなアカン』て宿題出されてんねんけど、これぞって札が決まらへんねん……」
蘭「そんなに悩むことかなぁ」
蘭はかるた札をはさんで向かい合わせに座った。
和葉「え!?」
蘭「百人一首って、恋の歌が多いでしょ。勝負とかそんなこと考えないで、ピンとくる好きな歌を選べばいい、と思うけどな」
和葉「恋かぁ〜……」
和葉が悩んでいると、蘭は一枚の札を指した。
蘭「私なら、これかな……」
《めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな》
和葉「紫式部やな」
札を覗き込んだ和葉は、顔を上げて蘭を見た。
和葉「せっかく会えた友達があっちゅう間に帰ってもうたって歌やけど……」
蘭「うん。アイツ、やっと会えたと思ったらすぐどっか行っちゃうから……こっちは話したいことがいっぱいあるのにさ」
不満をこぼしつつも、Aを想う蘭の顔はどこか嬉しそうだ。
和葉「そやね。アタシは……」
和葉は並べられた札を見つめ、一枚の札に触れた。
和葉「『しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで』……」
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マロン - 立て続けのコメント失礼します!から紅の恋歌のあとは紅の修学旅行書いて欲しいんですけどいいですか?二回目ですけど応援してます!頑張ってください!! (2019年9月21日 20時) (レス) id: 81eb5f8e4a (このIDを非表示/違反報告)
さきっち(プロフ) - マロンさん» ありがとうございます!(泣) (2019年9月8日 2時) (レス) id: f5cfe9f7a0 (このIDを非表示/違反報告)
マロン - 夜にすみませんいつも楽しんで読ませてもらってます!瞳の中の暗殺者の「大切だからだよ!」ってセリフのところ、夢主ちゃん(愛梨ちゃん)かっこよすぎじゃん、えマジでかっけーってなって家族に変な目で見られましたρ(тωт`) イジイジこれからも応援してます! (2019年9月7日 21時) (レス) id: 81eb5f8e4a (このIDを非表示/違反報告)
さきっち(プロフ) - 愁さん» 夢小説なので。ここでは夢主ちゃんが主人公なので新一くんの言葉をとるときはあります (2019年2月7日 20時) (レス) id: 8c299fa2e0 (このIDを非表示/違反報告)
さきっち(プロフ) - 愁さん» 新一くんは夢主ちゃんと付き合っているんですよ。蘭は新一より夢主の方が好きという設定です。一応設定に書いてありますけど (2019年2月7日 20時) (レス) id: 8c299fa2e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2018年9月2日 17時