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第8話 ページ10

その日の夜。
いつもの服に着替えると、Aは城内を歩いていた。
少し先に大刀を持って警護にあたっているハクの姿を見つけて『ハクー!』と声を上げて駆け寄る。


「姫様」

『警護?お疲れ様』


そう言ってハクを見上げると近くの壁に大刀を立て掛けて、周りに誰もいないかキョロキョロと見回した。
それにAが首を傾げているとハクが腰掛けた。


「姫様もどーぞ」

『え?あ、うん』


大人しくハクの隣に腰掛ける。


「疲れました?」

『ううん、そんなことないわ』

「A姫様の舞、ヨナ姫様喜んでましたよ」


宴の時にAは自分の誕生日祝いとヨナの誕生日祝いと称して舞を踊ったのだ。
カナの奏でる琴の音色に合わせて着物を揺らしながら舞うAはとても美しく見えた。


『カナの琴のおかげよ。にしてもハク、いいの?警護』

「話しかけてきたのは姫様でしょう」

『そーだけど』


ぷくっと頬を膨らませてハクを睨みつけると、ハッと目を見開いた。
ハクが何処か優し気な瞳で自分を見ていることに気付いたのだ。


「どうしました?」

『う、ううん。何でもないわ』

「そうですか」


パッとハクから視線を外して、俯くと思わず赤くなった頬を両手で押さえた。
月明りに照らされたハクの顔はやけに艶やかに見えて身体中に熱が回る。


―――あんな顔するなんて、ずるい…―――


熱を冷まそうと両手を頬に当てて俯ているAの顔をハクは見つめると、懐から何かを取り出した。


「姫様」

『ん?』

「後ろ向いてください」

『は?』


突然の言葉に目を瞬かせるが、ハクに言われた通り後ろを向いた。
すると、ふわっと髪の毛が持ち上げられた後に、首に何かが触れた感触。


「いいですよ」


くるっとハクの方を向いて自身の首に回った物を手に取った。
金細工の首飾りで、小ぶりな花に桃色の宝石が装飾されており、月明りに照らされ煌々と輝きを放っている。


『これ…』

「差し上げますよ」


照れくさそうに視線を逸らしてそう言ったハクにAは嬉しそうに微笑むと、立ち上がった。
誕生日の贈り物をハクに貰ったのなんてはじめてだ。
Aは数歩歩くとくるりとハクの方を振り返った。
月明りに照らされた桃色の髪と首飾りが煌々と光る。


『似合う?』

「…ええ」


頬をわずかに染めてAから視線を逸らしながら答えたハクにAは嬉しそうに頬を染めると、首飾りを持ち上げてニコリと笑った。


『ありがとうハク。―――大切にするわ』

第9話 「ちぎれた絆」→←第7話



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ムーミン一家 - 暁のヨナ、私も最近ファンになりました!面白いですよね〜ちなみに私はジェハ押しです。これからも頑張って下さい! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 8c840e0186 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファンになりました。早く続きが読みたいです。これからも更新楽しみにしてます。頑張って下さい。応援します。 (2018年7月7日 19時) (レス) id: 6d5e66c80d (このIDを非表示/違反報告)
ルイナ(プロフ) - 待ってました!更新これからも頑張ってください♪ (2018年7月6日 18時) (レス) id: 29bcf3ece3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2018年7月6日 17時

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