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第34話 ページ36

『テヨン……っ』

「どうした!?」

「姉様!?」


Aの声を聞いたハク達が駆けつけた。


『テヨンが急に倒れて…』

「発作じゃ」


そういうムンドク。


「テヨンは昔から肺が悪くて時折、呼吸マヒを起こすんじゃ。なに、薬を飲めばすぐ…」

「それが、今日届けてくれるはずの商団がまだ来ないのよ」

「大変だ!!」


カナがムンドクに説明していると里の者が駆けつけてきた。


「商団がここに来る途中、何者かに襲われた!!」

「そんな、商団の皆は?」

「わからない。大ケガをしているようだが、商品は全滅らしい」


Aは目を見開いた。
カナがくっと歯噛みして口を開く。


「じゃあ、水を手に入れる手段は絶たれたの!?」

『薬は…っ』


テヨンを抱き起しながらAはハク達を見上げた。


『テヨンの薬は…っ』


その言葉に返される言葉はなく。
カナは、くそ…と顔を顰めた。


「火の部族のヤツらだ」

「ナメやがって、もう許さん!」

「若長、何、黙ってんだよ!」

「らしくないですよ!長老っ」

「カナも何か言ってくれよ!」


ハク、ムンドク、カナは顔を険しくさせながら言葉を返すことはなく黙り込む。
ヨナはテヨンを抱きしめるAに寄り添いながら、焦燥とした気持ちでハク達を見上げている。
Aは腕の中で苦しそうに息を吐いているテヨンを見つめた。


(火の部族の後ろには空……王族がいる。
敵にまわしたら風の部族はただでは済まない)


―――いや…もう誰かが死ぬ所を見たくない―――


目をぎゅっと瞑ったAがテヨンを抱きしめるとぽむっと頭に手が乗ってなでなでと撫でられた。
顔を上げると包帯だらけのヘンデが笑顔でAの頭を撫でていて、皆は突然現れたヘンデに驚いていた。


「ヘンデ、お前…」

「はいはい、血の気の多いバカ共落ちつけー」

「あんたが一番先に特攻したんじゃない」


ヘンデの言葉にカナが思わず突っ込む。


「大事な事から考えよー。とりあえず急を要するのはテヨンの薬。俺、その薬持ってる東森の医術師のとこまで行ってくるわ」

「あんな所までそのケガでか?」

「俺、風の部族一、速く馬を駆れるもんー。
ねっいいでしょ、若長」

「…薬代、値切れよ」


そう言ったハクの後ろでカナがため息をついて頭を抱えるとヘンデはばびゅーと走り去っていった。


「ヘンデにお任せっ。でわー」

「速っ」

「無茶しやがって」


テウがそう言うと、静かに目を閉じていたハクがゆっくりと目を開けた。

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ムーミン一家 - 暁のヨナ、私も最近ファンになりました!面白いですよね〜ちなみに私はジェハ押しです。これからも頑張って下さい! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 8c840e0186 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファンになりました。早く続きが読みたいです。これからも更新楽しみにしてます。頑張って下さい。応援します。 (2018年7月7日 19時) (レス) id: 6d5e66c80d (このIDを非表示/違反報告)
ルイナ(プロフ) - 待ってました!更新これからも頑張ってください♪ (2018年7月6日 18時) (レス) id: 29bcf3ece3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2018年7月6日 17時

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