第37話 ページ39
「私は20年かけてこの商団を守ってきたんだよ。私らが何をしたっていうんだい」
「生きてりゃ何とかでもなるさ。いざとなったらあたしが世話してやるから、泣くんじゃないよ」
「ごめん、リサさん。ふらついちゃって…」
ヘンデが頭に手を当てながら謝ってきたが、それさえも聞こえていないかのようにAは唯真っ直ぐに商団の人たちを見ていた。
そんな姿に、Aの顔を覗き込むカナとヘンデとヨナ。
―――この人達は何の関係もないのに…!
火の部族はスウォンを即位させる為にここまでするの?
こんな不条理が許されるの?
あなたは、
あなたは許せるの?スウォン―――
「大丈夫ー」
考え込んでいたAの目の前にひょこっとヘンデが顔を出した。
へらへらと笑いながら口を開く。
「若長やカナや長老がいる限りね。あの人達、ああ見えて家族思いだから」
『「家族…」』
呟くAとヨナの隣でカナが「私は風の部族じゃないけどねぇ…」と溢していた。
「そう、風の部族は皆家族なのです。だからリサさんもリナさんも、もう俺らの家族なのです」
そう言ったヘンデの言葉に、Aとヨナの目に涙が滲んで一筋の涙が零れた。
ヨナがAに抱き着くと、その涙に動揺したヘンデがA達の顔を覗き込む。
「リサ…さん?リナさん…?」
「泣かせたな、ヘンデ」
「わーっ、ハク様に殺されるー」
「彼、ああ見えてねちっこいから〜」と嘆くヘンデの隣でテウが「カナもな」と呟くと後ろの殺気に感づいてハッと息を呑んだ。
テウとヘンデが恐る恐る振り返ると、そこには両手を腰に当てて青筋を浮かべたカナがヘンデを睨みつけていた。
「ヘンデ、あんたね〜〜!!」
「わああ!ごめんなさい!」
そのやりとりに周りが笑うと、Aとヨナも顔を見合わせて笑い合った。
―――ハクやムンドクにカナ。やさしい風の部族の人達。
強い痛みもあるだろう。
激しい怒りもあるだろう。
胸にしまって笑う。
誇り高い風。
この人達を
「リサさん?」
「姉様?大丈夫?」
「わあ、泣かないでっ」
「ヘンデ、あんたってやつは…」
巻き込んではだめ―――
顔を上げたAの目を見てヨナとカナは目を見開いた。
何かを決意したようなその目にカナは、ふっと諦めたように笑った。
カナのその諦めの笑いには一体…どんな思いが込められているのだろうか…。
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ムーミン一家 - 暁のヨナ、私も最近ファンになりました!面白いですよね〜ちなみに私はジェハ押しです。これからも頑張って下さい! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 8c840e0186 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファンになりました。早く続きが読みたいです。これからも更新楽しみにしてます。頑張って下さい。応援します。 (2018年7月7日 19時) (レス) id: 6d5e66c80d (このIDを非表示/違反報告)
ルイナ(プロフ) - 待ってました!更新これからも頑張ってください♪ (2018年7月6日 18時) (レス) id: 29bcf3ece3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2018年7月6日 17時