54話 『殺気充分の視線』 ページ7
キリトside
どさくさに紛れて妙なことを口走るカタナ使いのわき腹をシュンと一緒にもう一度今度は強めにどやしつける。だが、クラインの台詞が終わるか終わらないうちに、後ろに下がっていた五人のパーティーメンバーがガシャガシャと駆け寄ってきて、全員我先にと口を開いて自己紹介を始めた。
《風林火山》のメンバーは、全員がSAO以前からの馴染みらしい。クラインは独力で仲間を一人も欠くことなく守り抜き、攻略組の一角を占めるまでに育て上げたのだ。二年前ーーーこのデスゲームが始まった日、俺が怯み、拒んだその重みを、彼は堂々と背負い続けている。
胸中深くに滲む自己嫌悪を飲み下し、振り返ると、俺はランカとアスナに向かって言った。
キリト「……ま、まあ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく」
シュン「そうそう」
今度は俺たちの足をクラインが思い切り踏みつける。その様子を見ていたランカとアスナが、我慢しきれないというふうに体を折るとくっくっと笑いはじめた。クラインは照れたようなだらしない笑顔を浮かべていたが、突然我に返って俺とシュンの腕を摑むと、抑えつつも殺気のこもった声で聴いてきた。
クライン「どっどどどういうことだよお前ら!?」
返答に窮した俺たちの傍らに二人が進み出てきて、
『こんにちわ』
アスナ「しばらくこの人たちとパーティー組むので、よろしく」
とよく通る声で言った。俺とシュンは内心で、えっ今日だけじゃなかったの!?と仰天し、クラインたちが表情を落胆と憤怒の間で目まぐるしく変える。
やがてクラインがぎろっと殺気充分の視線を俺たちに向け、高速歯斬りに乗せて唸った。
クライン「キリト、シュン、てめぇら……」
これはただでは解放されそうもない、と俺が肩を落とした、その時。
先ほど連中がやってきた方向から、新たな一団の訪れを告げる足音と金属音が響いてきた。やたらと規則正しいその音に、アスナが緊張した表情でランカの腕に触れ、ささやいた。
アスナ「3人とも、《軍》よ!」
ハッとして入り口を注視すると、果たして現れたのは森で見かけたあの重装部隊だった。クラインが手を上げ、仲間の五人を壁際に下がらせる。例によって二列縦隊で部屋に入ってきた集団の行進は、しかし森で見た時ほど整然とはしていなかった。足取りは重く、ヘルメットから覗く表情にも疲弊の色が見て取れる。
安全エリアの、俺たちとは反対側の端に部隊は停止した。
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作者名：さきっち
| 作成日時：2018年3月5日 0時
