79話 『脳内の警告音』 ページ32
貴方side
キリト君たちが出て行ってからしばらく、僕とアスナは団長にこれからの活動の報告を聞いてからギルドにある部屋で談笑をしていた。
キリト君たちの方も心配ではあるがサクラたちもいるし大丈夫だろう。
そんなこんなで話し始めて一時間近く。だいたいの話の内容がアスナによる恋愛相談だったが、相手がシュンなだけに結構真面目に聞いていた。
てか、アスナがシュンのことを相当好きなのがわかった。同じ人の話題で一時間も潰せない。キリト君の話もちょっとは出たけど……リュウとサクラの話なんて残念ながら一回も出てこなかったよ。
そしてお茶を飲んで一息ついていた時、アスナが急にしおらしくなった。影を作る睫毛に、アスナの端麗な眉毛が寄せられる。カップを持つ手は少し震えていた。
アスナ「ねえ、ランカ。やっぱりわたし、シュン君たちが心配だよ。ゴドフリーは何でもいい方向に考える人だから……」
不安そうなアスナに、大丈夫だよ……と笑い飛ばそうとした僕の背中をゾクッと冷たいものが走った。
何だろう……この嫌な感じ。
アスナ「ランカ……？」
心配そうに僕を覗き込むアスナに軽く笑って、なんでもないと言うとカップに口をつけてお茶を飲んだ。
さっきから嫌な感じがする。どうして……どうしてこんな嫌な予感がするのだろう。
誰かが……僕の大切な誰かが危ない気がする。
眉を顰めて考え込む僕の顔を覗き込んだアスナは、どうしたの？と疑問を口にした。アスナに心配をかける事なんて出来もせず、僕は笑って誤魔化そうとしたが、その前にゾクッと冷たいものが背中に走った。
二度目だ。脳内が警告音を鳴らす。何かが……あるいは誰かが危ない。
アスナ「どうしたのランカ……。怖い顔してるよ？」
そんなアスナの問いかけに答えることなく僕はウインドウを可視モードにするとマップを開いた。その瞬間、ゴドフリーの反応が消えた。一瞬の事に僕とアスナは目を見開いた。
アスナ「うそ……」
口元に手を当てて目を見開くアスナを横目にマップをじっと見ると最終的に残った人数は五人。仮定で、キリト君、シュン、リュウ、サクラだとするとあと一人は誰だろうか。
ーーーアスナ『ゴドフリーは何でもいい方向に考える人だから……』
その瞬間、頭に浮かんだのはクラディールの顔で。ガタッと椅子から立ち上がるとアスナが驚いたように僕を見上げた。
『まさか……』
アスナ「ランカ……？」
『行くよ、アスナ!!』
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作者名：さきっち
| 作成日時：2018年3月5日 0時
