72話 『コロシアム』 ページ25
貴方side
コロシアム入り口には口々にわめき立てる商人プレイヤーの露店がずらりと並び、長蛇の列をなした見物人にあやしげな食べ物を売りつけている。
キリト「……ど、どういうことだこれは……」
キリト君はあっけにとられて傍らに立つ僕に問いただした。
『さ、さあ……』
リュウ「おい、あそこで入場チケット売ってるのKoBの人間じゃねえのか!?何でこんなイベントになってるんだよ!?」
サクラ「さ、さあ……」
シュン「ま、まさかヒースクリフの奴これが目的だったんじゃあるまいな……」
アスナ「いやー、多分経理のダイゼンさんの仕業だねー。あの人しっかりしてるから」
あはは、と笑うアスナの前で男たちはガックリ肩を落とした。
キリト「……逃げようみんな。20層あたりの広い田舎に隠れて畑を耕そう」
『僕たちはそれでもいいけど』
澄まし顔で僕は言う。
『ここで逃げたらすーーっごい悪名がついてまわるだろうねぇ』
キリト,シュン,リュウ「くっそ……」
サクラ「まあ、自分で蒔いた種だしねー」
アスナ「あ、ダイゼンさん」
アスナの視線の先を見ると、KoBの白赤の制服がこれほど似合わない奴もいるのかというほど横幅のある男が、たゆんたゆんと腹を揺らしながら近づいてきた。
ダイゼン「いやー、おおきにおおきに!!」
丸い顔に満面の笑みを浮かべながら声をかけてくる。
ダイゼン「キリトはんたちのお陰でえろう儲けさせてもろてます!あれですなぁ、毎月一回くらいやってくれはると助かりますなあ!」
キリト,シュン,リュウ「誰がやるか!!」
ダイゼン「ささ、控え室はこっちですわ。どうぞどうぞ」
控え室は闘技場に面した小さな部屋だった。ダイゼンは入り口まで案内すると、オッズの調整がありますんで、などと言って消えた。すでに観客は満員になっているらしく、控え室にも歓声がうねりながら届いてくる。
六人だけになると、僕たちは真剣な表情になり、両手でぎゅっと男たちの手首を摑んだ。
アスナ「……たとえワンセット勝負でも強攻撃をクリティカルでもらうと危ないんだからね。特に団長の剣技は未知数のところがあるし」
サクラ「危険だと思ったらすぐにリザインするのよ」
『こないだみたいな真似したら絶対許さないからね!』
キリト「俺たちよりヒースクリフの心配をしろよ」
キリト君はにやりと笑ってみせると、僕の両肩をぽんと叩いた。
試合は三回戦で、キリト君、シュン、リュウの順番で行われる。本当に大丈夫かな。
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作者名：さきっち
| 作成日時：2018年3月5日 0時
